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2007年03月03日 紙面より

「笑い」でもっと健康に 1日5回「わっはっは」

「笑い」でもっと健康に

何かとストレスが多い働き盛り世代。最近、大きな声で「ワ・ハ・ハ」と笑った記憶がないという人も多いのでは? 実は笑いには、ストレスを緩和するとともに、NK(ナチュラルキラー)細胞の働きを活性化させ、免疫力を高める作用があるのだ。ほかに、血糖値の低下、血液中の中性脂肪の減少などさまざまな健康効果があり、話題のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策にもなる。最近、心の底から笑ったことがないというあなた。思いっきり笑って、健康な体づくりに役立てみては?

笑いには、実はさまざまな種類がある。愛想笑いのような「社交上の笑い」、くすぐられたり、おいしいものを食べたりしたときの「快の笑い」。落語や知的なジョークを聞いたときの「前頭葉の笑い」、努力が報われ達成感を得たときの「スピリチュアル(精神的な喜び)の笑い」…。

日本医科大学医学部医療管理学教室の高柳和江助教授は、「大学生を対象に、『前頭葉の笑い』を促す実験をしたところ、NK(ナチュラルキラー)細胞の働きが活性化することが分かった。笑うことで、免疫力が高まるのです」と話す。

NK細胞とは、白血球の中にあり、がん細胞や、体内のウイルスを攻撃して排除する働きを持つ細胞のこと。人間が笑うと、脳の中で思考や行動を支配する領域である前頭葉に興奮が起き、免疫コントロールの指令塔である間脳から、神経伝達ペプチドという情報伝達物質が分泌される。この物質は、楽しい笑いの情報を受けると、善玉ペプチド(免疫機能活性化ホルモン)に変化。血液やリンパ液を通じてNK細胞と結びついて、人間が本来もっている自然治癒力を高めるのだ。

「がんや感染症の予防だけでなく、がんを発病した人の治療効果を上げるにも、実は笑いは役立っている。笑うことで、がんの進行を示すマーカーに変化が起きたという報告もあります」と同助教授。NK細胞は、「前頭葉の笑い」以外の笑いでも活性化することが知られており、ただ笑顔を作るだけでも、効果はあるという。

確実に、免疫力を高めるためには、「1日5回、声を出して笑うこと。これが笑いを健康に役立てるための処方箋(せん)です」と同助教授。

笑いには、ほかにも、ストレス緩和や、有酸素運動になるなど、さまざまな効用がある。

とはいえ、いい大人ともなれば、簡単には笑えない、というのが現実だ。高柳助教授は、「まずは、洗顔時など鏡を見たときに、ニコッと笑う習慣を身につけること。また、家族や同僚と目が合ったら、にっこり笑う。笑いは、人間関係を円滑にする効果もある。健康に良いだけでなく、熟年離婚を防ぐためにも有効ですよ」。

さらに、「ネクタイをゆるめるなど、リラックスした服装で、腰に両手を当て、深呼吸してから、口を大きく開け『ワ・ハ・ハ』と大きな声で笑ってみる。そのうち、自然に笑えるようになります」と「笑いのススメ」を説く。

笑う門には福来る。あなたも、豪快に笑って、健康になろう!

★笑いがストレスを緩和させる理由

ストレスを感じると、腎臓のそばの内分泌器官の副腎皮質から、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌される。高柳助教授によると、「笑うと酸素が大量に供給されコルチゾールの分泌が減り、その結果ストレスが鎮まる。単純な笑いよりも、『前頭葉の笑い』など、理解することで笑う笑いのほうが効果は大きい」という。また、ストレスがたまると交感神経が活発になるが、「その場合でも、笑うと自律神経の頻繁な切り替えが起こり、副交感神経が優位になり、ストレスが解消される」。

ストレス解消に、笑いを効果的に活用するには、「何度見ても絶対に笑えるというコメディー映画やコント、落語などを見つけること」と同助教授。同じものを見ても笑えなくなったときは、「うつ」の危険信号。医師に相談することが重要だ。

★笑いは有酸素運動

高柳助教授は、「『ワ・ハ・ハ』と、大きな声を出して、体全体で笑うと腹筋の運動になる。大笑いをして、おなかが痛くなるのもこれが原因」という。大きな声で笑うと、横隔膜を上下させるために腹筋(腹直筋、外腹斜筋)が激しく動き、それに伴い、大胸筋、広背筋も動く。心拍数も増加。血圧も上昇して呼吸が盛んになり酸素消費量が増える。その後、笑い終わって筋肉の緊張がとれると、心拍数や血圧が下がり、ゆっくりと深い呼吸になる。このとき、血液中の酸素濃度も上がるのだ。「ちょうど、適度な有酸素運動をした状態になる。笑うことで、体内に酸素をたくさん取り入れることができるので血行も促進される。大声で笑うと、血糖値や中性脂肪値が低くなるなど体にいいことがいっぱいあるんですよ」。

笑いがもたらす10の効能
★免疫力が高まる善玉ペプチド(免疫機能活性化ホルモン)が全身に分泌され、NK細胞が活性化。病原体への抵抗力が高まるとともに、がんの予防と治療の効果がある
★ストレスが解消する笑うと癒しの神経とも呼ばれる副交感神経が優位に。ストレスホルモンの別名を持つコルチゾールの分泌が減少。ストレスが解消されると、血圧も低下する
★記憶力が向上するほおの表情筋が頻繁に動き、顔面静脈が伸縮。脳から心臓に戻る血流が増加するため、脳細胞への栄養供給が増え、脳が活性化すると考えられている。また、集中力や記憶力が高まるα波も多く現れる
★幸せな気分になる人間の脳から脳内モルヒネが出る。自然な幸福を感じさせる化学物質エンドルフィンも血液中に大量に分泌される。また、脳内神経伝達物質のセロトニンの分泌も活性化。精神が安定し、鬱病(うつびょう)やパニック障害、摂食障害などの発症も抑えられる
★血糖値が下がるインシュリンを分泌する遺伝子のスイッチがオンになり血糖を正常化させる作用が働く。ストレスによる血糖値の上昇も緩和
★中性脂肪が減る声を出して笑うと、腹筋を使った適度な有酸素運動になるため、中性脂肪が燃焼する。血行も良くなり、新陳代謝が向上。体の中に老廃物などがたまりにくくなる
★便秘が解消される大声で思いっきり笑うと、横隔膜を上下させるために腹筋が運動。腸の働きをはじめとする内臓の消化機能も向上する。また、ストレスも減少し、便通が良くなる
★右脳が活性化する情緒をつかさどる右脳の働きが活発になる。ストレスが多く、論理的な思考と関連すると考えられている左脳を多く使う人に、リラックス効果が期待できる
★リウマチの痛みを緩和する免疫のバランスが良くなり、免疫力が高すぎる人に起こりやすい膠原(こうげん)病やリウマチの予防や症状の改善に役立つ。モルヒネの6倍以上という強力な沈痛作用を持つ神経伝達物質エンドルフィンが増加し、痛みを忘れる
★自律神経のバランスがよくなる笑い始めでは血管が収縮、交感神経の作用が続き、その後、副交感神経の働きが活発になる。自律神経の頻繁な切り替えが起こるため、ストレスで交感神経が優位になりがちな現代人の自律神経のバランスが整えられる