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2007年02月17日 紙面より

健康診断では正常値でも仕事中に上昇「仮面高血圧」

「仮面高血圧」を知っていますか? 健康診断や病院で測った血圧が正常なのに、仕事中や、早朝、夜間などに高血圧になっている状態のことで、ストレスにさらされやすい働き盛り世代に多いのが特徴だ。健診での血圧が正常値の人の約6人に1人が「仮面高血圧」とされ、放置していると動脈硬化が進行。脳卒中や心筋梗塞(こうそく)を発症する危険性が、正常血圧の人の4倍近くにも跳ね上がる。家庭や職場での血圧をしっかりチェックして、見逃さないことが大切だ。

会社での健康診断や病院での診察室血圧が、140/90ミリHg未満と、正常範囲内になりながら、日常の血圧が高くなる「仮面高血圧」。自治医科大学内科学講座循環器内科学部門の苅尾七臣教授は、「『仮面高血圧』でも、血圧が高い状態が続く『持続性高血圧』と同等か、それ以上に動脈硬化が進行する。『正常』という仮面をつけている分、危険といえる」と警鐘を鳴らす。

「仮面高血圧」とは仕事中や、早朝、夜間などの1日のある場面で高血圧となる状態のことで、働き盛り世代の場合、ストレスが原因で仕事中に血圧が上がっていることが多い。「『仮面高血圧』の人は、受診時や健診時にはストレスから開放されるために血圧が下がり、正常範囲内となることが多い。仕事中の収縮期血圧(最大血圧)が診察室血圧より20ミリHg程度高い人は珍しくない」(同教授)のだ。

ストレスを受けると、交感神経の働きで血管が収縮し、血圧が上昇する。緊張しやすい人は血圧が上がりやすく、睡眠時間が5時間以下でも血圧上昇の原因となる。このほか、「家庭での夫婦間の結束が弱い場合、仕事のストレスが大きいと1年後の収縮期血圧が平均で2・7ミリHg上がったというデータもある」(同教授)。

ストレス以外にも、飲酒や、糖尿病などの疾患が原因で、早朝や夜間に突出して血圧が高くなるケースもあるが、いずれも放置していると、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす危険性が高まる。「普段の血圧も診察室血圧も正常という人に比べ、『仮面高血圧』の人のリスクは3・86倍」という。

こうしたリスクを軽減するには、「家庭用血圧計などで日常生活の中の血圧を測る習慣を作り、『仮面高血圧』ではないかを見極めることが大切」(同教授)。理想は「朝、目覚めて1時間以内の排尿後(朝食前)、仕事中、就寝前の1日3回」の血圧測定だ。すでに高血圧で治療を受けている場合も4人に1人が「仮面高血圧」のため、治療中の人も、日常の血圧をきちんと測定することが必要だ。

ちなみに、普段の血圧(家庭血圧)は、135/85ミリHg未満が正常値。診察室血圧が正常で、家庭血圧が正常値より高い場合は、「食事、運動、睡眠などの生活習慣を改善し、早めに医師に相談すること」と同教授はアドバイスする。

血圧は1日の中でもさまざまに変動する。家庭や職場で血圧を測り、「仮面高血圧」を見破ることが、健康への第一歩だ。

「仮面高血圧」の種類
(1)ストレス高血圧=仕事中のストレスが原因。日中に血圧が上昇するため、朝と夜の家庭血圧測定だけでは見過ごしてしまうことが多い。働き盛りの中高年世代に多く、日中多忙な主婦らにもよく見られる
(2)早朝高血圧=早朝、起床後に血圧が異常に上昇する。冬は早朝の血圧が上がりやすく、1週間では、月曜日に高くなることが多い。また、酒をよく飲む人も早朝に血圧が高くなる傾向が強い
(3)夜間高血圧=就寝中も血圧が下降しない、もしくは夜になって血圧が上昇する。高血圧の影響が朝まで続き、早朝高血圧につながることも。糖尿病、脳卒中、心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が主な要因

★血圧を5ミリ下げるだけで突然死のリスクが減る!

高血圧で問題になるのは、血管の内腔(血液が流れることができる空間)が狭くなったり、血管が硬くなったりする動脈硬化。血管は筋肉でできており、高血圧が続くと、血液の圧力に耐えようと動脈の血管壁が厚くなり、その結果、内腔が狭くなるのだ。動脈硬化が進行した状態で、ストレスなどで血圧が一時的に急上昇すると、血栓が血管に詰まり、脳卒中や心筋梗塞などが起こる。これを防ぐには、「まずは、最大血圧の平均を5ミリHg下げること。わずかな数字ですが、脳卒中による突然死のリスクが25%、心筋梗塞による突然死のリスクが15%低下します」(苅尾教授)。最大血圧が115ミリHg以上の人は、5ミリ減少を目標に、食生活の改善、運動などの生活習慣の改善を心掛けよう。

【血圧の正しい測り方】

家庭用血圧計を使っても、測定方法を誤っては正確な血圧値が得られない。まずは、椅子(いす)などにゆったりと座り、腕帯(腕に巻く布)をぴったりと左腕に巻く。セーターなどは腕まくりをせずに脱いでから測定するのが基本。このとき、腕帯の下端をひじ関節部の内側から1〜2センチ上にあわせること。オムロン ヘルスケア(京都市右京区)新規事業開発センターの白崎修さんによると、「腕を机の上にのせ、腕帯を心臓と同じぐらいの高さにする。血圧が上がるので、前かがみにならないようにしてください」。
   血圧を測るときのポイントは、「座った状態で、1〜2分リラックスしてから測る。トイレを我慢した状態で測ると血圧が上がるので、尿意がない状態で測ること」(同)。家庭や職場での測定は毎日、同じ時間帯での測定を繰り返すことが重要だ。

こんな人は「仮面高血圧」に要注意!
★喫煙の習慣があるたばこは血管を収縮させ、血圧を上げる。特にヘビースモーカーの場合は、健康診断や病院では一時的に禁煙した状態になるので、血圧が喫煙時より低く測定されることが多い
★酒をたくさん飲む適量のアルコールは血管を拡張させるが、多飲すると、翌朝の血圧が上昇する原因となる。中でも、収縮期血圧130ミリHg以上で飲酒歴がある人は、早朝高血圧になるリスクが高い
★精神的ストレスが多い仕事や家庭でのストレスに加え、怒りも血圧の上昇につながる。仕事中はストレスから高血圧状態が持続していても、血圧を測る機会が少なく、気がつかないことが多い
★糖尿病にかかっている糖尿病の合併症の中でも最も早く出るといわれる糖尿病神経障害が原因で、夜間の血圧が上昇することがある
★心拍数が多い心拍数が多いほど送り出せる血液量が多くなる。心拍数と血圧は密接な関係があり、血圧の上昇にかかわっている
★運動量が多い運動の際に血圧が上がりやすい人は、高血圧になりやすい。特に中高年世代の過度な運動は注意が必要
★心肥大や腎障害(たんぱく尿)がある高血圧との関連が強い疾患。診察室血圧が正常値でも、夜間の血圧などが高い場合がある
★睡眠時無呼吸症候群にかかっている呼吸が止まった状態になると血圧は急上昇する。睡眠時無呼吸症候群の早期治療が重要
★高血圧治療のための降圧薬の効果が持続していない朝、服用した降圧薬の効果で、外来受診時には正常血圧になっていても、コントロールが不十分で、夜間から翌朝にかけ血圧が上昇している場合がある