グルメ・情報

2007年02月16日 紙面より

六本木、美の三角地帯 続々と美術館がオープン

黒川紀章氏の設計も話題の国立新美術館

森美術館や多くのパブリックアートでリードする六本木ヒルズ

サントリー美術館を核にアートとしての色彩を強める東京ミッドタウン

「東京の新しいアートの拠点」として注目の港区六本木。1月21日開館した「国立新美術館」に続いて、3月には東京ミッドタウン内に「サントリー美術館」がオープン。六本木ヒルズ内の「森美術館」を含め、3つの大型美術館が徒歩10分圏内に集結する。3館は「六本木アート・トライアングル」として連携し、アート散歩をいざなうマップを作成、さらなる盛り上がりを目指す。この地図を片手に、日々変貌しつつある六本木を歩いた。

地下鉄千代田線乃木坂駅直結の「国立新美術館」。先週末の建国記念日を含む3連休には展覧会に約4万2000人が訪れるにぎわいぶり。

地下1階、地上4階、国内の美術館では最大級という1万4千平方メートルの展示スペースを持つ同館。設計は黒川紀章氏で、波打つようにうねったガラス張りの外観が日差しに映え、高さ約21メートルの吹き抜けロビーには春の光が降り注いでいる。

入場は無料で、企画展にはそれぞれ観覧料を支払う仕組みだ。所蔵品を持たず、自主企画展や新聞社などとの共催展、日展をはじめとする公募展を中心に運営する。

「教育普及にも力を入れ、美術に関する情報や資料収集と提供を行う、アートセンターとしての役割を果たす、新しいタイプの美術館です」と林田英樹館長は話す。

現在は、パリのポンピドー・センターの所蔵品が並ぶ「異邦人たちのパリ1900−2005」展など3つの企画展を開催中。4月にはモネの大回顧展、9月にはフェルメールの名画がやってくるから見逃せない。

同館から外苑東通りへ出る道を歩くとほどなく、都内で一番高いというミッドタウンタワー(地上54階、248メートル)が見えてくる。旧防衛庁跡地にできる東京ミッドタウンは3月30日オープン。ここには、サントリー美術館が赤坂から移転。企業美術館の先駆けで、「生活の中の美」をテーマに日本の伝統的な絵画や工芸、ガラス、屏風など約3000件のコレクションを持つ。隈研吾氏が設計した、「和」の情緒溢れるモダンな建物も期待を集める。

そこから、六本木交差点を渡り、森美術館へ。地上53階の高層階にある美術館で、写真、メディアアートなどジャンルを超えたユニークな視点の企画展を開き、03年10月の開館以来、470万人以上が入館している。

新しいアートの拠点となりそうな六本木。美術ジャーナリスト藤田一人さんは、「それぞれ役割のある美術館が連携を図るのはいいこと。現代美術が好きだった人が、古美術や公募展の面白さを発見するきっかけになるかもしれないし。ターゲットは展覧会を見に行って観光を楽しむ感覚の一般の人だから、シャトルバスを走らせるとか、割引特典を充実させるとか、踏み込んだ施策は必要だと思う」と話す。

森美術館のチケットで同ビルの展望台「東京シティビュー」にも入館することができるが、「美術を見るより、雰囲気を楽しむという人はそれでもいい。日本ほど美術館が大衆化されている国はありません」(同)。

気軽に、素直に美術館という“場”を楽しみに出かけてみよう。

★企業もアートに注力、東京ミッドタウン

3月30日、グラウンドオープンを控える東京ミッドタウン。こちらも、新東京国立美術館に続いて、アートの世界が堪能できる。企業美術館の先駆け的存在の「サントリー美術館」はじめ、本社を移した富士フイルム、富士ゼロックスもそれぞれギャラリーをオープンさせるからだ。富士フイルムが開設するのは、企画展を開催する「ギャラリーPHOTO IS」とプロ・アマチュアを問わず作品展の場を提供する「富士フイルムフォトサロン」。

富士ゼロックスは、複写機の原理「ゼログラフィー」にちなんで収集していた版画作品を公開する「Fuji Xerox Art Space」をオープン。年4〜5回、展覧会やイベントを開催する予定だ。

このほか、東京ミッドタウンには、日本産業デザイン振興会や九州大学大学院芸術工学研究院などが参加する「デザインハブ」も開設され、デザイン関連ビジネスの活性化を目指す。

★新しい美術館の歴史を築く

「いまや美術館は、美術品の倉庫ではなく、ある種のイベント会場であり、出会いの場であり、好奇心のための場であり、休息の場でもある」と話すのは森美術館の南條史生館長。「欧米の前例に従うだけでなく、新しいモデルを提案すること、新しいタイプの美術館を目指すことが、新しい美術の歴史を築くことにつながるのではないか」と話す。森美術館は現代性と国際性をテーマに独自の活動を続けており、国立新美術館は収蔵品を持たない新しいタイプの美術館。サントリー美術館のような企業美術館も日本的な存在だ。開発は三者三様だったが、六本木には「東京の新しいアートの拠点」と呼ぶにふさわしい美術館がそろったといえそうだ。


◆歩いて楽しい六本木アート・トライアングル◆
★国立新美術館(港区六本木7−22−2、TEL03・5777・8600ハローダイヤル)=現在、開催中の「20世紀美術探検−アーティストたちの三つの冒険物語」(観覧料1100円)と「黒川紀章展−機械の時代から生命の時代へ」(無料)は3月19日まで。「異邦人たちのパリ1900−2005」(1500円)は5月7日まで(5月1日は開館)。開館時間は10時〜18時(入館17時30分まで)、会期中の金曜は20時まで(入館は19時30分まで)、火休。入館無料
★サントリー美術館(港区赤坂9−7−4東京ミッドタウンガーデンサイド、TEL03・3479・8600)=3月30日オープン。開館記念展I「日本を祝う」と題し、祥・花・祭・宴・調をテーマに収蔵作品を展示。6月3日まで、前期・中期・後期に分けて展示替えを行う。会期中は日・月・祝日10時〜18時、水〜土10時〜20時、火休。入館料1000円
★森美術館(港区六本木6−10−1六本木ヒルズ森タワー53階、TEL03・5777・8600ハローダイヤル)=5月6日まで「日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで」と「笑い展:現代アートにみる『おかしみ』の事情」を同時開催。月・水〜日10時〜22時、火10時〜17時、3月20日、5月1日22時まで延長(入館は各30分前まで)。入館料1500円

◆六本木1丁目にも注目の「アート・トライアングル」◆
大倉集古館(おおくらしゅうこかん)=港区虎ノ門2−10−3。実業家の大倉喜八郎が1917年に創立した日本初の私立美術館。3月18日まで「館蔵花鳥画展」。月休。入館料800円。TEL03・3583・0781
泉屋博古館分館(せんおくはくこかんぶんかん)=港区六本木1−5−1。住友家所蔵美術品を展示。3月11日まで「大名から侯爵へ鍋島家の華」。月休。800円。TEL03・5777・8600(ハローダイヤル)
菊池寛実記念 智美術館(ともびじゅつかん)=港区虎ノ門4−1−35。現代陶芸の収集家、菊地智の収集品を公開。25日まで「我が心の陶芸」。月休。1300円。TEL03・5733・5131