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2006年12月16日 紙面より

太っていなくても日本人に多い「隠れ糖尿病」

隠れ糖尿病
進行した「糖尿病」の自覚症状
★トイレが近い
★尿の量が多い
★のどが渇く
★食欲が旺盛で、いくらでも食べられる
★食べてもやせる
★足がつる・しびれる・痛い
★全身がとてもだるい
★疲れやすい
★目がかすむ
★傷が治りにくい
★性機能に問題が生じる(ED=勃起障害)
★体がかゆい、かさつく

40歳以上の10人に1人が発症するといわれる「糖尿病」。なりやすい体質に加え、過食や運動不足などが重なって起こる、生活習慣病の代表選手だ。ところが、740万人いると推定されている糖尿病罹患(りかん)者のうち、治療をしているのは、約228万人と3分の1以下。自覚症状がほとんどないことから、「糖尿病」であることに気が付かない人や、忙しさから放置している人が多いという。その実態と予防法とは?

インスリン分泌量の少なさや働きの悪さから高血糖状態が続く「糖尿病」。肥満も要因の1つだが、「自分は太っていないから大丈夫」という考えは間違いだ。

京都大学名誉教授で、関西電力病院(大阪市福島区)の清野裕院長によると、「米国人糖尿病患者のBMI(肥満指数)平均が32なのに対し、日本人の平均は23・5。日本人の場合、小太りで『糖尿病』を発症するのが特徴です」。

例えば身長が170センチなら、米国人糖尿病患者の平均体重は92・5キロだが、日本人は68キロと少ない。理由は、「日本人のインスリン分泌量が欧米人の約半分と少ないため」(同院長)だ。

食物は消化管でブドウ糖に分解・吸収されて血液中に入り(血糖値の上昇)、肝臓に運ばれる。これを膵臓(すいぞう)が感知し、ベータ細胞からインスリンを分泌。その作用で、血液中の糖分が筋肉、脂肪、肝臓に取り込まれる(血糖値の低下)。ところが、「日本人は、2000年以上もの間、インスリンが少なくてすむ穀類中心の食生活を続けてきたため、膵臓(すいぞう)のベータ細胞が最近の食生活の変化に対応できない。現代の欧米型の食生活に必要な量のインスリンが分泌できないんです」。

肉類を食べると、インスリンの働きが悪くなる特質もあり、これが、日本人に糖尿病患者が急増している背景にある。

予防と症状の改善に必要なのは、よく知られているように食生活の見直しと運動。とはいえ、なかなか実践できないのが現実だ。同院長は、「『おいしく食べる』ことがポイントです」として、別掲の7カ条を挙げる。「食事のおいしさは、活力を生み、ストレスを和らげるだけでなく、エネルギー代謝も活発にし、自律神経も整える」からだ。

運動は、通勤途中や社内での移動に階段を使うなど、日常の工夫が大事。「階段を12〜13段のぼると、3キロのダンベル運動を約100回行うのと同じ運動量になる」から覚えて損はない。

「糖尿病」が怖いのは、網膜症や糖尿病腎症などの重大な合併症を引き起こすこと。心筋梗塞(こうそく)や脳卒中など死に至る病も誘発。平均寿命に対し、糖尿病患者の寿命は男性で10・2歳、女性で13・7歳も短くなるという。

軽視せず、早めの対処が必要だ。

★「糖尿病」になるとやせる理由

「血糖値が健康な人の約2倍以上になると、血液中のブドウ糖が、臓器でエネルギーとして利用されなくなる。そのかわりに体内に蓄積されていた脂肪が使われる。そのため、やせるのです」と清野院長。これが続くと、脂肪が分解されるときに、ケトン体という有害物質が作られ、血液が酸性になって、昏睡を起こすこともあるという。

また、血液中で利用されないブドウ糖が大量に尿に排泄され、これに伴って尿量が増える。その結果、体内の水分が不足して、のどが渇くのだ。

★尿に糖が出るから「糖尿病」?

通常、血糖値が約170mg/dLより高くなると、ブドウ糖が尿に排出される。そのため、「糖尿病」は、尿に糖が出る病気と考えられがちだが、実際には、「『糖尿病』でも、尿に糖が出ないこともある。また、先天的に低い血糖値であっても尿に糖が出る人もいます」と清野院長。

そのため、「糖尿病」の診断は、血液中のブドウ糖濃度を表す血糖値と、赤血球の中にあるヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合している特殊なヘモグロビン(グリコヘモグロビン)の割合を%で示したヘモグロビンA1cの値をもとに行われる。とはいえ、「尿糖を測る意味がないわけではない。簡単に自分でチェックできるという意味では尿糖検査は大切です」(同院長)。自分は大丈夫と思っている人は大食した1〜2時間後に、尿をとって試験紙をつけてみるといい。本当に健康に近い状態ならば、食後といえども尿糖は出ない。「陽性なら、血糖値やヘモグロビンA1cの値を測る必要があります」(同院長)。

「糖尿病」予防・改善のための“おいしい”食生活7カ条
獣肉由来の脂肪は、血糖の上昇や動脈硬化につながるためなるべく避け、イワシやサバなど、脂の乗った魚で満足感を得る
おいしさを感じさせる“だし”をきかせて調理したものを食べる
好物を無理に我慢せず、全体の栄養バランスを考えて、腹8分目を基本にゆっくりと食事を楽しむ
食べすぎたときは、1週間、または1カ月で調整する
ながら食いをせず、目で味わう、会話を楽しむなど、食事時間を楽しくする工夫をする
肉類は、週に2回程度におさえる
サラダ油やコーン油などリノール酸が多い油は現状維持。バターを控え、オリーブオイルなどオレイン酸の多い油を積極的に利用する