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2006年11月04日 紙面より

双極II型障害…うつ→軽い躁を繰り返したら要注意

双極II型障

睡眠不足でも疲れも感じず、仕事をバリバリこなす。かと思えば、落ち込んで、クヨクヨ悩む…。こんな症状を繰り返すようなら、ご用心。「双極性障害(躁うつ病)」の1つである「双極II型障害」の可能性があるからだ。聞き慣れない病名だが、発症は30〜40代に多く、中高年の自殺の背景として話題になる「うつ病」よりも自殺率が高いと問題になっているのだ。まずは症状をチェック、心当たりがあれば適切な治療を受けよう。

自分を過小評価する、周りに迷惑をかけているのではないかと考える、気分が晴れない、やる気が起こらない、よく眠れない。こんな症状が1週間ほど続いた後、突然、いつもよりも陽気で、少しおしゃべりで、少し気前がよくなる。少ない睡眠時間でも、精力的に動き回る−。こんな「うつ状態」と「軽い躁状態」をそれぞれ1週間以上ずつ繰り返すのが「双極II型障害」だ。

国立精神・神経センター武蔵病院の樋口輝彦院長は、「『双極II型障害』は『うつ病』と同じ『気分障害』に分類される病気。特別な病気ではありません。30〜40代に発症することが多く、『うつ病』より自殺率が高いので特に注意が必要です」と警鐘を鳴らす。

症状はうつ、躁ともにある日突然、現れる。特徴は、「うつ状態のときは『うつ病』と同じですが、うつの時間は長いです。うつが回復した後に軽い躁状態になるため、『元気になった』『遅れを取り戻そうとしている』と見られることも多い」(同院長)。

こうした状態を甘く見て放置していると、症状が全くない時期が次第に短くなり、うつや躁の症状が頻繁に出始める。休みなくうつと躁を繰り返す「ラピッドサイクラー」へと発展してしまうこともある。

「落ち込む、はしゃぐを繰り返すうちに、社会的評価が落ちる。アルコール依存や物質依存を併発することも多い。自殺に至ることもある。悪化にしたがって治療が難しくなるため、早い時期に治療を開始する必要があります」(同院長)

発症には、神経の情報伝達システムの脆弱性と、引き金となるストレスが関わると考えられている。治療法には、リチウムなどの気分安定薬の服用、ストレスがかからない日常生活を送るための指導を行う。

「『双極II型障害』は、“心の生活習慣病”のようなもの。糖尿病など、他の生活習慣病同様、きちんと治療を続けることで、大半の人は日常生活を普通に過ごせるようになる。症状が出ないように予防もできます」と同院長。

放置していれば周囲の信頼を失い、仕事にも支障をきたす「双極II型障害」。まずは、症状の有無をチェック。きちんと治療を継続していくことが大切だ。

【「双極性障害」発症のメカニズム】

脳の中には、神経の活動を維持していくためのさまざまなシステムがある。情報の伝達には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が神経細胞と神経細胞をつなぐ橋渡し役をしている。
   「遺伝子や体質、性格など、さまざまな要因で、『双極性障害』になりやすい情報伝達システムの脆弱性がある場合、ちょっとしたストレスが引き金となって、システムが機能障害を起こすと考えられる」と同院長。
   つまり、神経伝達物質の量が減ったり、過剰に働きすぎたりして、情報の伝達が不安定になってしまうのだ。

【「双極性障害」の症状と種類】

「双極性障害」のうち、これまで躁うつ病と呼ばれていたのが「双極I型障害」。うつ状態の症状は、「うつ病」や「双極II型障害」と大差ないが、躁状態になると、「周囲の人がお手上げになるほど。気分は爽快で楽しくて仕方なく、ほとんど寝なくても平気で、疲れを知らずに活発に活動する。多弁で早口になり、話し続ける。家や車など大きな買い物をむやみにし、ばかげた商売への投資などに専念する。自分は周囲から尊敬されている素晴らしい人間だと確信し、ちょっと口をはさむだけで怒り出すといった具合です」(同院長)。また、幻覚や妄想などを伴うこともある。
   このほか、「双極性障害」には、「双極II型」、躁状態とうつ状態が休むことなく頻繁に入れ替わる「ラピッドサイクラー」、「双極II型」よりもさらに軽い気分の高揚と落ち込みを繰り返す「気分循環型」、躁状態とうつ状態が同時に現れる「混合状態型」、物質またはアルコールの乱用によって起こるもの、抗うつ薬などが原因で起こる軽い躁状態などがある。

【「双極性障害」と「うつ病」の違い】

樋口院長によると、「『双極性障害』は、『うつ病』に躁の状態が加わったもの。ただし、『うつ病』がストレスの影響を受けやすく、誰にでもおこる可能性が高いのに対し、『双極性障害』は、ストレスが引き金になることはあっても、病気になりやすい因子がなければ発症しにくいと考えられます」。
   発症年齢では、「双極I型障害」が10〜30代▽「双極II型障害」が30〜40代▽「うつ病」は40〜50代に多い。男女差では、「うつ病」が女性の発症が男性の2倍あるのに対し、「双極性障害」は男女の比率はほぼ同じ。
   「双極性障害」では、一般的に初発症状としてうつ状態がでることが多いが、「『うつ病』に使われる抗うつ薬は、あまり効果がないだけでなく、躁状態を誘発することもある。逆に、『双極性障害』の症状改善に役立つリチウムなどの気分安定薬は、『うつ病』には効果はあまりありません」(同院長)。
   適切な治療には、「『うつ病』か『双極性障害』かを、早い時期に見極めることが重要」(同院長)だ。

「双極II型障害」セルフチェック
(※これまでの人生で、以下の症状が少なくとも1週間続いたことがある場合にチェック)
★自分で「テンション」が高い(「ハイ」な気分)と感じ、周りの人から「何かあったの?」と言われた
 →「はい」は次の質問に、「いいえ」は判定Aに
★ゆううつな気分または沈んだ気持ち(うっとおしく、落ち込んだなど)が続いた
★何事にも興味がわかない、または、いつもなら楽しめるはずのことが楽しめないことが続いた
 →上の2つの症状のうち、1つ以上当てはまる場合は次の質問に、当てはまらない場合は、判定Aに
★自分のことを天才だと思う
★いつもより1時間ほど少ない睡眠でも平気で動き回ることができる
★ふだんより、おしゃべりになった
★次々といろんなアイデアが頭に浮ぶ(頭の回転が速くなったと感じる)
★1つのことに集中できない
★周りの人が心配するほど活動的になったり、休みなく動き回ることがある
★無性にセックスがしたくなる
★体重がひどく減る、または食欲がなくなる
★話し方や動作がにぶくなる、あるいはイライラしてじっとしていられない
★一晩中寝ても、または週末休んでも疲れがとれないと感じる
★自分に価値がないと感じたり、周りの人に迷惑をかけていると感じる
★睡眠に問題がある(寝つきが悪い、真夜中または早朝に目が覚めるなど)
★死にたいと思う
 →上の13の症状のうち、0〜6個が当てはまる場合は判定B、7〜13個が当てはまる場合は判定Cに
▽判定A=「双極II型障害」の可能性は低い
▽判定B=「双極II型障害」の可能性は低いが、気になることがあれば、専門医の診察を受けるように
▽判定C=「双極II型障害」の可能性あり。早めに専門医の診断を