2008年05月15日 更新

【シネパラ】芯の強い女性像演じた田中麗奈「山桜」

 満開の山桜の下で弥一郎(東山紀之)と運命的な出会いをするヒロイン野江(田中麗奈)(C)「山桜」製作委員会

 満開の山桜の下で弥一郎(東山紀之)と運命的な出会いをするヒロイン野江(田中麗奈)(C)「山桜」製作委員会

 藤沢周平原作の時代劇小説、5作目の映画化。うまくいかない人生に立ち向かう下級武士や市井の人々の姿を描き人気の藤沢作品だが、今作のヒロインは、結婚に失敗した武士の娘・野江。我慢を重ね、いつか幸せをつかむために、ひたむきに生きる姿を詩情豊かに描く感動作だ。

 江戸後期、庄内地方の海坂藩。最初の夫を病で失った23歳の野江(田中麗奈)は再婚先での生活になじめず、耐える日々を送っていた。春先に実家を訪れた野江は、山道で薄紅色の山桜に見とれ、手を伸ばそうとしたとき、精悍(せいかん)な武士に声をかけられ、手折った小枝を手渡される。武士はかつて野江に縁談を申し入れた弥一郎(東山紀之)だった…。

 田中が、芯の強いりんとした女性像を見事に演じ、女優としてひと皮むけた。嫁ぎ先で滅私奉公さながらに夜なべ仕事をして耐えても笑顔をたやさない。今を耐えればいつか事態は好転する−野江のそんなけなげな姿が、見る者の胸を打ち、明日への生きる力を与えてくれる。薄幸に堪え忍ぶ彼女は、やがて弥一郎の母親(富司純子)という、海より深い寛容な心の持ち主と出会い、気持ちが通い合う。庄内地方の美しい四季を織り交ぜ、物語はたんたんと進む。田中、東山、富司らの豪華キャストの無駄のない演技を引き出した篠原哲雄監督の力量には舌を巻く。主題歌「栞」を一青窈が熱唱、感動の余韻を残してくれる。

(石山真一郎)

【一口メモ】

 「山桜」の公開にちなみ、ケーブルテレビの「時代劇専門チャンネル」では、「ドラマで楽しむ藤沢周平の世界」を放送中(毎週日曜午前11時〜、午後7時〜)。作品は「よろずや平四郎活人剣(主演・中村俊介)、「命捧げ候〜夢追い坂の決闘〜」(主演・緒形拳)、「闇の歯車」(主演・仲代達矢)、「清左衛門残日録」(同)のテレビ作品。「山桜」の情報も随時放送し、映像化された藤沢作品の魅力を堪能できる。問い合わせは時代劇専門チャンネルカスタマーセンターTEL03・5549・2214。