2008年05月02日 更新
【シネパラ】秘書の目線で描く菊池寛の波乱人生「丘を越えて」

高級車にお気に入りの葉子(池脇千鶴)を乗せ、菊池寛(西田敏行)は夢気分を味わう(C)「丘を越えて」製作委員会2008
芥川賞、直木賞の創設者であり、最近のテレビドラマで大ヒットした「真珠夫人」などの作家でもある菊池寛。その波乱の人生を、私設秘書・葉子、朝鮮出身の若い編集者との3人の深い心の結びつきを中心に、昭和初期のモダンな東京の街並みを背景にして、丁寧に描いていく。
映画は、葉子(池脇千鶴)の目線で進む。作家で文藝春秋社社長、菊池(西田敏行)の目にとまり私設秘書の仕事についた彼女は、東京・銀座の近代的なビルで働くモダンガールに変身。人情家の菊池にあこがれつつ、朝鮮出身の若く美男な編集者、馬海松(まかいしょう=西島秀俊)にもひかれてゆく。葉子は対照的な2人の男性の波間に漂い成長していく。やがて軍靴の足音が聞こえ始める。
伝説の大作家、菊池の素顔が興味深い。社長室では小学生の純真な作文に涙を流し、葉子の素直な魅力に、たちまち恋におちる。文芸の本質は芸術より大衆の生活に根ざしたものだと考え、時代を先取りした「文藝春秋」「オール讀物」を創刊。一方でハイカラな服装にこだわり、銀座の一流店での食事や酒を飲み、数人の愛人の面倒をみながら、変わりゆく時代を敏感に感じ取っていった。大作家の人間的な側面にスポットをあて、娯楽作品として楽しめる趣向になっている。
(石山真一郎)
【一口メモ】
原作は東京都副知事としても活躍する作家・猪瀬直樹氏の「こころの王国」。脚本は今野勉。サラリーマンが誕生し、飛行機、地下鉄、自動車が走り、映画館がにぎわった昭和モダンを再現。ラジオからジャズ、チャールストン、昭和歌謡が流れ、銀座通りをモボ、モガが闊歩する。当時のヒット曲「丘を越えて」「君恋し」「アラビヤの歌」などが効果的に使われている。高橋伴明監督。
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