2008年04月18日 更新

【シネパラ】鹿児島に伝わる「郷中教育」の魂描く「チェスト!」

桜島を控えた雄大な大自然のなか、伸び伸びした演技を披露した(左から)宮崎香蓮、高橋賢人、先生役の松下奈緒、御厨響一、中嶋和也(C)2008「チェスト!」製作委員会

桜島を控えた雄大な大自然のなか、伸び伸びした演技を披露した(左から)宮崎香蓮、高橋賢人、先生役の松下奈緒、御厨響一、中嶋和也(C)2008「チェスト!」製作委員会

 鹿児島を舞台に、ギラギラと照りつける太陽の下で、キラキラ輝く少年たちが、苦難を乗り越え成長していく姿をさわやかに描いた青春映画。

 主人公の少年、隼人(高橋賢人)の生き方がいい。「負けるな、うそをつくな、弱い者いじめをするな」という、鹿児島に伝わる「郷中(ごじゅう)教育」の魂を受け継いで、やんちゃだが正義感の強いクラスの人気者。そんな彼がひとつついたうそがあった。実はカナヅチのため、毎年行う「錦江湾横断遠泳大会」を仮病をつかって欠席していたのだ。だが、小学6年生の今年は父親(高嶋政宏)やマドンナ先生(松下奈緒)の強い勧めで参加するはめに…。

 3人の少年たちのはじける演技が実に初々しく、ドラマを引っ張っていく。隼人をはじめ、トラウマを抱える転校生の智明(御厨響一)、持病に悩む雄太(中嶋和也)。雄太の病気は緊張するとおなかをこわしてしまうという笑いを誘う設定だが、智明は会社の犠牲になって自殺した父親の悲しみが癒えないでいるという重い内容。思春期のピュアな少年たちのさまざまな悩みと痛みを、やさしい大自然と、少年、両親たちが助け合い解決していくいくつかのシーンは、胸にしみ入り感動的だ。

 雑賀俊郎監督は、「今の自分を超えたい人、優しさに飢えている人たちに見てもらいたい」とメッセージを送る。大人たちにも、子ども時代の純粋な心をとりもどしてくれる必見の映画だ。

(石山真一郎)

【一口メモ】

 「郷中教育」は、400年前から薩摩(鹿児島)に伝わる教えで、幕末には、大久保利通、西郷隆盛らの有能な人材を輩出した。ラストの「錦江湾横断遠泳大会」は、鹿児島の錦江湾を桜島側からスタートして対岸まで4.2キロ泳ぐ大会で一般市民も参加して行われる。マドンナ役の松下は、女優のほか劇中に流れるピアノ曲も作曲し映画音楽に初挑戦。主人公・隼人の母親役を、元フジテレビアナの大坪千夏が演じているのも注目だ。