2008年03月14日 更新
【シネパラ】病める米国の姿浮き彫りに「ノーカントリー」
本年度の米アカデミー賞で作品、監督、助演男優、脚色の4部門を獲得した話題作。製作・脚本・監督のコーエン兄弟が、不条理な事件に遭遇する人々を通じ、独特の視点で、病めるアメリカの姿を浮き彫りにする。
80年代の南部の町テキサス。偶然、大金を見つけたベトナム帰還兵の男(ジョシュ・ブローリン)が現金を持ち去ったことで運命が変わり始める。麻薬がらみの危険な金で、保安官(トミー・リー・ジョーンズ)や殺し屋(ハビエル・バルデム)が動き出す。追う者と追われる者のサスペンス、行く先々で無数の死体が転がり、無残な暴力シーンに目を見張る。
サム・ペキンパー監督の「ワイルド・バンチ」をほうふつさせる荒涼とした南部の風景は、ヒリヒリするような乾いた画面で視覚に訴えてくる。失われていく南部の町は寂寞として映るが、突如として血と、終わりのない痛ましい暴力に、アメリカの現状が重ね合わされていく。
殺し屋を演じたスペイン出身の名優ハビエル・バルデムが異彩を放つ。コインの裏、表で殺しを決め、残虐でいて妙に礼儀正しい振る舞いが不気味だ。エアガンのような酸素ボンベを携えて殺人を重ね、無表情に歩く姿は存在感たっぷり。
保安官役のトミーが「昔は法と正義が町を守ったが今や想像を絶する事件が多発する」と嘆くシーンに、ふと日本の現状を思いだし身が縮む思いがした。
(石山真一郎)
【一口メモ】
アメリカを代表する作家、コーマック・マッカーシー原作の「血と暴力の国」の映画化。イーサンとジョエルのコーエン兄弟が製作、脚本、監督した。共演は帰還兵の妻にケリー・マクドナルド、保安官の部下にギャレット・ディラハント。R−15指定。
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