気鋭の演出家である八鍬健之介氏が発表した「アカメ」 人間群像が描かれた舞台だが、気鋭の演出家である八鍬健之介氏が発表した「アカメ」(17日まで、東京・杉並『座 高円寺』で上演)は、絶妙の緊張感とエンターテインメント性の高さをみせている。
氷点下20度、北海道の雪深い山麓でジビエを食するための鹿撃ちイベントという設定。ゲストハウスの一室、しかも大雪に閉ざされた非日常の空間が、登場人物それぞれが内包する感情、暗い過去を次々に噴出させていく。夫婦、カップル、高校の同級生とその先輩…。関係性の妙味も効いている。
北海道・帯広出身の八鍬氏が実体験したもの、実在の人物をモデルに構築されたストーリーだという。狩猟に関する表現もリアリティーがあり、一室にいながら山や雪の深さも伝わってくる。ただ、秀逸なのは「すべてを描かない」ことだろう。
テレビドラマのように、ト書き以上の丁寧な説明は、むしろ見る側の集中力を奪うようにも思う。セリフでも意図的に主語を排除されているためか、想像力を働かせ、セリフにのぞくわずかなヒントがプロットになって、やがて話がつながり始める。観劇後、知人らと「そういう意味だと理解した」と解釈を論じ合うきっかけになるだろう。八鍬氏自身も「描かないものを伝えることは、演劇的なものの方が上回る」と説明するように、そのもくろみは成功しているかもしれない。
同作は2017年度の劇作家協会新人戯曲にノミネートされ、17日の千秋楽の日に結果が発表されるという。来年8月には新作「海を訳す(仮)」も予定されている。(芳賀宏)