2015.2.27 19:28

日本酒の蔵元が書いた注目の“ビジネス書”が話題に!

山本氏

山本氏【拡大】

 日本酒の若手蔵元が書いた本が「ビジネス書」、「経営指南書」として注目を集めている。実家の酒蔵で「酒質の改善」、「組織改革」、「人材発掘」と矢継ぎ早の経営改革を行い、日本酒業界でも注目の存在に変身させた手腕は、店舗経営や企業経営のヒントにもなる。

 和歌山県海南市にある平和酒造の山本典正専務取締役(36)が「ものづくりの理想郷~日本酒業界で今起こっていること~」を上梓したのは昨年末。正月明けには早くも増刷が決まり、現在は3刷だ。

 大学卒業後、東京の人材ベンチャー企業を経て、曾祖父の代から続く酒蔵に戻ってきた著者はすぐさま経営改革着手した。「紙パック酒から味本位のお酒へ」、「流通経路の見直し」、「季節雇用から通年雇用」…。一言でいえば簡単だが、斜陽産業ともいわれる日本酒業界、独特の商慣習を持つ業界で、失敗すれば経営を直撃、存在さえ危ぶまれる挑戦だった。

 決してぶれなかったのは「酒造りは伝統文化を発信することだ」という信念。たとえば、小さな酒蔵は別として、日本酒業界では蔵元は経営に、杜氏は酒造りに専念するのが当たり前の世界。蔵元から見れば、酒造りはある種、ブラックボックスだった。

 しかし、伝統文化として存続、いや発展するためには双方が互いを理解して、「消費者が飲みたいお酒」=「酒蔵が作りたいお酒」でなければならない。若くて実力派の杜氏と話し合い、それぞれの現場に出向いて年々、酒質の改良を重ねていった。

 その考え方は両者にとどまらず、蔵人(社員)にも酒造りの技術やデータを共有させ、昨年は実際に6人の蔵人にそれぞれのお酒を造らせたほど。もちろん、こうした挑戦を楽しんでくれるような人材を発掘しなければならない。そのために全国から蔵人を募集。コストは経常利益の4割にも相当するという。

 こうして紀伊の風土から生まれたお酒として、新しく立ち上げた吟醸酒「紀土」(きっど。英語名は「KID」)は昨年、JAL国際線のビジネスクラスに採用されるまでに成長した。同書では何を考えて、どう実行してきたかを包み隠さず公開。飲食店経営者や日本酒ファンのブログなどで話題になっているが、「懸命に『働く』方、真剣に人生を考える方に捧げたいと思います」と著者。実際、ホットな(まさに実現中の)ヒントが散りばめられている。

◆やまもと・のりまさ 1978年、和歌山県生まれ、京都大学経済学部卒。全国の若手蔵元と日本酒イベント「若手の夜明け」を立ち上げ、2011年から代表を務める。「ものづくりの理想郷~日本酒業界で今起こっていること」(dZERO、1600円+税)