アメリカの金融危機を連想させるスリリングで重厚な人間ドラマ。84歳の巨匠シドニー・ルメット監督の最新作で、ラクしてもうけてきた兄弟が金でつまずき、安易に犯罪に手を染める数奇な運命を、親と子の因果な関係を絡めて描いていく。
ニューヨークで大手不動産会社の会計責任者を任されているアンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、離婚され養育費も払えない弟ハンク(イーサン・ホーク)に危険な企てを持ちかける。それは、両親が地道に営む宝石店に強盗に入ること。盗む宝石には保険がかけられており、闇でさばけば誰も損はしないという筋書きだったが、最悪の事態が待ち受けていた…。
ルメット監督の演出が冴える。先が読めない緊迫した展開、登場人物の意外な人柄と心情が、フラッシュバックの手法で次第に明らかになっていく構成は巧みだ。
演技派のフィリップが、いきなりファーストシーンで愛妻との激しいぬれ場を熱演。リアルなからみにド肝を抜かれる。豪華なマンションでの一見幸せな生活も、実は会社の金を不正操作で使い込んだもの。情緒不安定のあげくに麻薬で癒す姿に、人間のもろさと弱さがあぶり出される。ねじれた兄弟の修復に立ち上がる厳父役の名優アルバート・フィニーのいぶし銀の演技が心に残り、久々に見応えのある作品に出合った。
(石山真一郎)
一口メモ
主人公役フィリップが、美しい妻(マリサ・トメイ)とバカンス先のリオのホテルで繰り広げるプロローグの濡れ場で、作品はR−18指定に。全裸で後ろから突き上げ、あえぎ声とともに肉体をくねらすショットが続いて驚くが、このシーンは人間の醜さや美しさを象徴的に描き、全米の映画ファンが選ぶ映画誌の「ベスト・ヌード・シーン」に選ばれた。作品はニューヨーク批評家協会賞をはじめ6つの映画賞を受賞。