−−師匠、寒バヤって何ですか。
「何だ、また突然に。ハヤっていうのは、標準和名・ウグイだが、関東ではハヤと呼ばれることが多い。栃木県では、“アイソ祭り”というのが、知られているが、そのアイソとはハヤのことだ。繁殖期になると、お腹がオレンジ色に染まることからアカッパラなんて呼ぶ地方もある。河川の清・渓流域に大群を作って生息しているので、その昔は、山間部のタンパク源として貴重な存在だった魚だ」
−−へ〜、そうなんですか。と言うことは、寒バヤって冬に釣れるハヤのことなんですね。
「そういうこっちゃ。最近じゃあまりやる人はいなくなったが、以前は、寒バヤ釣りは、かなりポピュラーな釣りだった。俺もその昔、よく通ったよ」
−−その昔って一体いつ頃のお話ですか。
「俺が、釣友会に入っていた頃だからかれこれ40年くらい前か」
−−そんな大昔のお話なんですか。父たちが、『久し振りに寒バヤ釣りにでも行くか』って話していたんで、師匠に聞いてみたんですが。
「以前は、沖釣りやブラックバスなんて釣りはなかったしな。下町の釣友会なんかも沢山あったからな。そういう意味で釣りを取り巻く環境が大きく変わっちまったからな。俺も寒バヤ釣りって単語は久し振りに聞いた気がする」
−−釣れるんですか。今でも。
「俺も久しくやってないから確実に釣れるのかと聞かれると、情報を持っていないから何とも言えないが、場所さえ選べば、釣り人が減っている分、結構釣れる気がするな」
−−久し振りに行きませんか。父たちの話を聞いていたら、面白そうだと感じたんですがね。
「時期が時期だけに寒いが、結構面白いぞ。“尺バヤ”と言われるように、大型も掛かってくるから、結構楽しめるぞ」
−−どんな場所でどうやって釣るんですか。
「確実なのは、トロ場と呼ばれる水の流れのないポイントだが、面白いのは、トロ瀬と呼ばれるある程度水深の深い瀬に餌を流して釣る方法だな」
−−行きましょうよ。ちゃんと防寒着を着ていけば寒さは大丈夫ですよ。ねえ、行きましょうよ。
「よし、行こう。竿の手入れもしていないが、今夜見てみるわ」
−−それと、場所の情報も仕入れておいて下さいね。
「分かった。万端整えてご連絡しますよ」
−−楽しみにしていますからね。
「分かったよ」