2018.6.15 05:00

【甘口辛口】大谷の右肘の状態はいかに…重大でないことを祈るばかり

【甘口辛口】

大谷の右肘の状態はいかに…重大でないことを祈るばかり

 ■6月15日 81年前に発行された吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」。漫画版が今年、200万部を突破したが、小説では漫画にない挿話に目が留まった。主人公のコペル君が友人を前に六大学野球の早慶戦のラジオ放送を模写する。「紺青の空晴れ渡り、風は落ち、神宮球場には砂埃(すなぼこり)一つあがりません」。よどみなく語り、慶応が勝つと早稲田びいきの友人がコペル君に飛びかかった。

 戦前のスポーツの王様が六大学野球だったことがよく分かるが、著者が手直しした戦後版ではプロ野球の南海-巨人戦にかわった。当時、交流戦はないので日本シリーズか。岩波文庫の解説によると、時代に合わせる狙いもあるが、作者が野球好きゆえ楽しみながら書き直したそうだ。ちなみに南海が勝っている。

 野球は戦前も戦後も国民の娯楽として君臨している。それが青少年向けの名著で分かるのが興味深い。著者が野球好きなので、現代版に改訂したとしてもサッカーではなく野球を選んだと思うが、今ならプロ野球にするか米大リーグにするかで大いに悩んだのではないか。

 作者の死後、野茂英雄、イチロー、松井秀喜、田中将大ら名だたる日本のメジャーリーガーが誕生。今年は大谷翔平が加わった。コペル君が平成生まれなら大谷に夢中になっているはず。吉野源三郎は、夢に終わった大谷とイチローの対戦をコペル君に実況させたかもしれない。

 著書はどちらに軍配を上げるのだろうかと夢想していた矢先、大谷が右肘靱帯(じんたい)の損傷で休養入りしたという一報が。今週には、監督は否定したが靱帯再建手術を受けるとの報道も出た。今は故障が重大なものでないことを願うしかない。 (鈴木学)

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