2018.6.5 05:00

【甘口辛口】カネの力を信じ切って生きた『紀州のドン・ファン』 哲学貫いた末の非業の死

【甘口辛口】

カネの力を信じ切って生きた『紀州のドン・ファン』 哲学貫いた末の非業の死

 ■6月5日 「ドン・ファン」とは17世紀スペインの伝説上の放蕩児、ドン・ファン・テノーリオのことだそうだ。日本人では1メートル82の長身と端正なマスクで有名女優と次々浮名を流した俳優・故岡田真澄さんが、そのイメージにぴったりだった。フランス生まれで英語のほか、フランス語もペラペラ。とにかくカッコよかった。

 和歌山県田辺市の自宅で死亡し、体内から覚醒剤の成分が検出されて大きな話題になっている『紀州のドン・ファン』こと野崎幸助氏は享年77だった。テレビで生前の映像を見ると、4000人の女性に30億円も使ったと豪語していただけに遊び疲れたのか、ドン・ファンのイメージはなかった。

 警察は殺人容疑で東京都内の複数の関係先を家宅捜索しているが、これほど妄想をたくましくする事案も最近珍しい。都内に別宅のある55歳も下の妻、やはり都内から通う60代の家政婦、「全財産を託す」と指名?されながら先月、もがき苦しんで急死した愛犬…。“登場人物”からしてテレビのサスペンスドラマそのものだ。

 それにしても、4000人に30億円とは「1人あたり75万円か」とつい無駄な計算をしてしまう。よほどマメだったのだろう。飛行機に乗ると畳んだ数枚の万札を名刺と一緒に客室乗務員に渡してナンパしたという。「他にカネの使い方はなかったのか」と、カネも女性にも縁のない人たちからはやっかみ半分の声も聞かれる。

 政治家も役人も平気で嘘をつく時代。野崎氏は世の中で嘘をつかないのはカネだけと、カネの力を信じ切って生きてきたのかもしれない。独自の哲学を貫いた末の非業の死。カネが幸せのすべてとはいえないことも改めて教えてくれた。 (今村忠)

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