2018.4.26 05:00

【甘口辛口】「痛いから欠場はぜいたく」引き継いで欲しい鉄人・衣笠さんの教え

【甘口辛口】

「痛いから欠場はぜいたく」引き継いで欲しい鉄人・衣笠さんの教え

 ■4月26日 「その息づまる緊張のなかをカープの一塁手、衣笠が江夏のところに近づいていったことを記憶にとどめている人は少ない…」。作家の故山際淳司が『江夏の21球』で書いている。1979年の日本シリーズ、広島-近鉄第7戦の九回裏無死満塁の攻防。小欄もテレビで見たが、確かに名場面の名脇役だったはずの衣笠の動きは記憶にない。

 《オレもお前と同じ気持ちだ。ベンチやブルペンのことなんて気にするな》。ここで代えられるくらいならユニホームを脱いでもいい、という江夏の気持ちをくみ取ってかけた言葉だった。取材したことはなかったが、この文章を読んだだけで男気あふれるその人間性が垣間見えた。

 元広島の衣笠祥雄氏が23日夜、上行結腸がんで亡くなり25日の各紙は追悼記事で埋まった。あれだけの選手がなぜ…という長年の疑問は「なぜ監督にならなかったのか」という小紙の記事で氷解した。指導者として現場に戻ると人脈など複雑な要素がからみ、それらに絡め取られたくなかったのだ。

 「人がよくて、もめごとを好まない。監督には向かなかったようだ」と本紙専属評論家の江本孟紀氏。歴代3位の161死球を受けながら投手に文句をいったことはなかった。「踏み込んでフルスイングしたから死球も多い。でも当たった方も悪いという考えで、それだけプライドが高かったのだろう」と江本氏。

 大相撲では「休場は試合放棄と同じ」と名大関魁傑(のち放駒理事長)が引退まで皆勤を貫き、衣笠氏は「痛いから欠場はぜいたく」と不滅の2215試合連続出場を記録した。軽いけがでもすぐ休みたがる時代だが、最小限、鉄人の教えは忘れずに引き継いでもらいたい。 (今村忠)