2017.10.7 05:00

【甘口辛口】カズオ・イシグロ氏と村上春樹氏の文学世界には共通するものがある

【甘口辛口】

カズオ・イシグロ氏と村上春樹氏の文学世界には共通するものがある

■10月7日

 今年のノーベル文学賞が5日夜、カズオ・イシグロ氏と伝えられた瞬間、思わず口走ってしまった。誰、それ? 日本人と思いきや、英国籍という。今度こそ日本人作家の村上春樹氏が取るのではとひそかに期待していただけに、当初はトンビに油揚げをさらわれたような気分だった。

 ファンというのは身勝手なものだと、われながらあきれる。が、読書の秋。未知の作品に親しむ機会が増えたと思い直したい。調べてみると2人の文学世界には共通するものがある。例えば、イシグロ氏の「わたしを離さないで」と村上氏の「ノルウェイの森」だ。

 いずれも映画やドラマで映像化された切ない恋愛小説。不条理の渦巻く人生で、愛という一筋の光を求めてさまよう孤独や悲しみを描いている。底流には、どこぞの政治とは一緒にしたくない純粋な「希望」がある。それならば、ここ数年、有力候補に挙げられてきた村上氏を先に取らせてあげればよかったのに…とつい恨み節も出る。

 が、言うまでもなく、年下に先を越されたぐらいでへこむ村上氏とは思えない。今後も素晴しい作品を書き続けて来年こそは取ってほしい。ところで、イシグロ氏は英国の大学時代、くしくも昨年のノーベル文学賞受賞者の米シンガー・ソングライター、ボブ・ディランに憧れ、ミュージシャンを目指したという。

 日本のシンガー・ソングライターでイシグロ氏と村上氏に似た世界を持つ人はといえば、同じ60代の中島みゆきではないか。新曲「慕情」は♪愛より急ぐものが どこにあったのだろう…と歌い出し、深い慈愛と警告にあふれる。別れ歌の女王・中島もいつか候補に、そして取ってほしいものだとふと思った。 (森岡真一郎)

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