2017.9.11 05:00

【甘口辛口】“肉食”で10秒の壁を突き破った桐生…東京までに海外でも9秒台出せば「本物」

【甘口辛口】

“肉食”で10秒の壁を突き破った桐生…東京までに海外でも9秒台出せば「本物」

■9月11日

 「外国選手は肉食。草食の日本選手も肉食にしないと勝てない」。スタートダッシュの速さから「暁の超特急」と呼ばれ、1935年に100メートルで10秒3の世界タイ記録を出した吉岡隆徳氏の言葉だ。55歳で迎えた64年東京五輪で、100メートル優勝の「弾丸」ボブ・ヘイズ(米国)らの走りを目の当たりにしてしみじみ言ったという。

 「100メートルはパワーの爆発の勝負」とも言った。スタートすれば体勢を立て直すヒマもない。もちろん努力も不可欠だが全身の筋肉のバランスや、素質の勝負と吉岡氏は考えた。その弟子が直伝のロケットスタートで何度も10秒1を出し、限りなく9秒台に近づいた飯島秀雄だった。

 しかし、10秒の壁は日本選手にとってとてつもなく厚かった。何人も挑んでははね返され、東洋大の桐生祥秀(21)が4年越しの重圧をはねのけ日本学生対校選手権決勝でやっと壁を破った。9秒98。語呂合わせで救急医療の大切さを呼びかける「救急の日」とされる9月9日にくしくも9秒9台。日本陸上界にとって大きな記念日になる。

 桐生は身長1メートル76と大柄ではないが、素質に恵まれているのだろう。昨年末からはハンマー投げの室伏広治氏の指導で体幹を強化し直した。もちろん「肉食系」で大学の練習場がある埼玉・川越市のレストランでは、いつもハンバーグや厚切りステーキの2品を注文するという。

 後は「2回目」をいつ出すか。アジア出身で初めて10秒の壁を破り、直近2度の世界選手権で決勝に残った中国の蘇炳添(9秒99)のように外国で出せば「本物」だろう。勝負弱さも気になる。国内で常に勝てる勝負強さを身につけ東京五輪で期待に応えてほしい。 (今村忠)

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