過日、甲子園で行われた阪神−巨人戦の試合前練習でのこと。
「お願いがあるんだけど…」
巨人・大野マネジャーに頭を下げられベンチ裏に招き入れられると、そこにはユニホームと取れたボタンと針と糸。「一応女の子だからと思って。でも、やっぱり無理…か?」
失礼な! こう見えても裁縫だけは腕に覚えアリ。趣味は刺繍という暗〜い少女時代もあったくらいですよ! 得意満面で針を動かしていると、通りすがる選手からも「すげえ! お母さんみたい」と褒められ、鼻高々。こういう株の上げ方もあったかと、ほくそ笑みながら生地を裏返したとき、ふと気付いた。
この第2ボタン、糸が摩耗したり、ほつれた感じの“勤続疲労”ではなく、裏側からブチっと糸が切れている。この感じはまさか…。
「そうなんですよ。日々成長して、巨乳になってるんですよ」
ユニホームの主は、いぶし銀的活躍でチームを支える古城茂幸内野手。確かに昨季より体が大きくなったように感じるが、そこまでとは。胸ボタンが弾け飛ぶ“巨乳ワザ”なんて、マンガの世界だけと思っていた。
気分はすっかり、「家政婦は見た」の市原悦子。ユニホームを管理するアディダス社の担当者に聞き込みすると、その「壊れ」方ひとつにも色々な特徴があることが分かった。
“巨乳”ならぬ“巨尻”自慢は、アレックス・ラミレス外野手だ。パンと張ったベネズエラ産のヒップは、バット同様に破壊力抜群。ユニホームはまずお尻が破けるといい、数回スライディングをしたらすぐ穴があいてしまうとか。
右脚のすそばかり破れるのは野間口貴彦投手。昔の投手は、軸足側のひざ下にマウンドの土をベットリつけていたというが、若手でそこまで沈みこんで投げるタイプは珍しい。投手陣で断トツという『すそ破壊率』は、野間口のダイナミックな投球フォームを物語っている。
巨人で一番頻繁にユニホームをダメにするのが、高橋由伸外野手だというのは意外だった。確かに派手なスライディングやダイビングキャッチに挑むイメージはあるけど…。
「それだけじゃなく、ユニホームをタイトに着ているからなんです」(同社担当者)
ダボっとしたサイズではなく、体にぴったりとしたユニホームを着るのが高橋由流。破れやすいひざやお尻の下に事前に縫っておく「あて布」は、見栄えがよくないから、と絶対にしない。つまりはユニホームを整然と着こなすこだわり故の「クラッシャー」だったというわけだ。
小さな穴や「ほつれ」ひとつが習慣や性格を雄弁に語る、というのは大発見。この洞察力を浮気発見にでも生かしたいところだけど、まずは相手探し。とりあえず「ごめんくださいませ〜」と締めておくことにする。
佐藤 ハルカ(さとう・はるか)
サンスポ運動部野球担当遊軍。16年間女子校育ちと一見“お嬢”だが、幼少期に習ったピアノ、バレエ、バイオリンはすべて挫折し学生時代はソフトボール&軟式野球に熱中。とはいえ暴投癖からポジションはDH(DP)か右翼だった。サンスポ入社後、サッカー担当として2002年日韓ワールドカップ、04年アテネ五輪などを取材。05年から3年間、プロ野球巨人担当。業界随一の男運&金運のなさが悩み。趣味は短歌。東京都出身。