北京五輪ニュース

2008年04月17日 更新

【水泳】北島、貫禄の北京切符!59秒台3連発も不満顔

3大会連続の五輪出場を決めた北島だが、59秒台連発も日本&世界記録更新ならず浮かぬ顔(撮影・浅野直哉)

3大会連続の五輪出場を決めた北島だが、59秒台連発も日本&世界記録更新ならず浮かぬ顔(撮影・浅野直哉)

表彰式でミュンヘン五輪金メダリストの田口氏に祝福され、やっと笑顔が浮かんだ(撮影・浅野直哉)

表彰式でミュンヘン五輪金メダリストの田口氏に祝福され、やっと笑顔が浮かんだ(撮影・浅野直哉)

 日本選手権第2日(16日、東京辰巳国際水泳場、観衆=3279)8月の北京五輪で2大会連続2冠を目指す男子平泳ぎの北島康介(25)=日本コカ・コーラ=が100メートル決勝で、北京五輪派遣標準記録を軽く突破する59秒67の好タイムで優勝し、史上最多タイとなる9連覇を達成。シドニー、アテネに続く3大会連続の五輪出場に花を添えた。予選からの3レースすべてで59秒台を連発する好調ぶり。18日に予選が始まる200平こそ、日本&世界記録を更新する。

 ピストル音とともに飛び込み、浮かび上がるとすでに頭ひとつリードしていた。北島が腕をかき、足を蹴り、北京につながる直線を突き進む。

 断トツの1位でゴール。電光掲示板を食い入るように見上げた。59秒67。日本記録59秒53の更新はお預けになったが、日本水連が定めた最高ランクの「派遣標準記録S(1分0秒05)」を突破し、北京五輪の出場権を手に入れた。それでも笑顔は浮かばない。

 「記録に対するプレッシャーがすごい強かったですね。もう1回、泳ぎたい」

 国内に敵はいないだけに、自身の持つ日本記録、さらに世界記録更新を目標に掲げたことが逆に呪縛(じゅばく)となった。50メートルのターンは微妙にタイミングがずれた。後半50メートルの腕のかきは、本来20回のところを焦って23回もかいていた。平井伯昌コーチも「五輪は最後の10メートルで順位が入れ替わる」と厳しい注文をつけた。

 それでも北島は「泳ぎ自体は悪くなかった」と収穫を口にする。“4WD泳法”と名付けられた腕と脚の両輪をフル回転させる新泳法は、この日も力強い推進力を発揮した。予選、準決勝、決勝と59秒台を3連発したのは、05年モントリオール世界選手権以来。「これができるのはボクと(世界記録保持者の)ハンセンくらい」と胸を張った。

 シドニー、アテネに続く3大会連続の五輪出場を決めた。男子200背泳ぎの糸井統(89−97)と並ぶ日本選手権の最多9連覇も成し遂げた。だが、今回の五輪選考会は通過点でしかない。「五輪に出ることが試合のテーマじゃない」ときっぱり言い切った。

 テーマは記録だ。ライバルのハンセンに重圧をかけるには世界記録の更新しかない。次は18日に予選が始まる200平。「2分8秒50」を突破すれば、記録より勝負に徹する本番の五輪でも、圧倒的な優位に立つことが可能となる。

(浅井武)


■北島 康介(きたじま・こうすけ)

 1982(昭和57)年9月22日、東京・荒川区生まれ、25歳。競泳男子100メートル平泳ぎ。00年シドニー五輪平泳ぎ100メートル4位、04年アテネ五輪は100メートルと200メートルの2冠。世界選手権の優勝は03年の100メートルと03、07年の200メートル。両種目とも前世界記録保持者。日体大出。日本コカ・コーラ所属。1メートル78、72キロ。

■派遣標準記録S

 北京五輪代表となるには過去の成績は一切考慮されず、日本水連が設定した派遣標準記録を決勝で突破し、かつ2位以内に入ることが条件。派遣標準記録はS、I、IIと3段階に格付けされ、Sは今大会から導入。五輪3位を想定したタイム。待遇面に差があり、Sを突破すれば日本代表のスケジュールにかかわらず、独自の調整が許される。16日までに「S」を突破したのは北島だけ。

★田口信教の目

 ターンでミスをしても59秒台を出したことは評価できる。伸びのあるフォームは誰にもまねができない。スタートの飛び込みやターンの精度を上げれば、さらにタイムは縮まるはずだ。

 北京五輪の金メダル争いは58秒台に突入すると見る。もちろん、ハンセンがライバルになるだろうが、世界最初の58秒台スイマーは北島になるだろう。平泳ぎは両太ももを進行方向に引きつける際、いかに水の抵抗を減らすかがポイントになるが、北島は脚を引きつける角度やタイミングが抜群にうまい。

 対照的にハンセンはガムシャラに腕をかくだけで、水の抵抗を考えた泳ぎには見えない。私がコーチなら、すぐにフォームを改良したいほどだ。

 また、北島の江戸っ子気質も勝負の世界には向いている。ここ一番の集中力はたいしたものだ。平井コーチを始め、周囲を取り巻く人にも恵まれている。金メダルを取るには運を呼び込むことも重要。北島にはその条件が整っている。

(72年ミュンヘン五輪男子100メートル平泳ぎ金メダリスト、鹿屋体育大教授)