2008年03月10日 更新
【陸上】新星誕生!中村友梨香が初マラソンで北京確実

超新星が現れた。初マラソンの中村が北京五輪代表の座を確実にした(撮影・浜坂達朗)
名古屋国際女子マラソン(9日、名古屋市瑞穂陸上競技場発着)スーパーヒロインの誕生だ! 初マラソンの中村友梨香(21)=天満屋=が2時間25分51秒で優勝。今夏の北京五輪代表の座を確実にした。初マラソンで五輪切符を手にすれば、92年バルセロナ五輪代表の小鴨由水(ダイハツ)以来の快挙。2年前から今回の挑戦を決めていた新鋭が、デッカイ仕事を成し遂げた。
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ぎこちなかったのは、最後だけだった。少しだけ両手を挙げ、笑顔を見せることなくゴールイン。初体験の42.195キロ。中村が大舞台の主役となった。居並ぶ先輩を蹴散らし、21歳の新鋭が北京切符を“予約”した。
「いけるとしたら最後の10キロ。そこまでは焦ったらダメと思いました」。はにかんだ笑顔が初々しい。最初の5キロが17分53秒の超スローペース。その後もタイムが上がらない展開に32.5キロで終止符を打った。下りを利用するように前へ。あとは一度も振り返ることなくゴールへ飛び込んだ。「残り10キロはバテると思ったけど、駅伝の10キロのつもりで走りました」。マラソンの駆け引きを体験したことはないが、勢いで突き進んだ。
あとは時間との勝負。「何としても2時間26分は切りたかった」と腕時計を何度も確認。大阪国際で日本人トップ(2位)となった同じ天満屋に所属する森本友(24)には17秒及ばなかったが、40キロ以降は昨年11月の東京国際での野口みずきと同じ7分13秒。初マラソンでは歴代7位となる2時間25分51秒で、フィニッシュした。
五輪金メダルのQちゃんをはじめ、アテネ五輪代表で天満屋の先輩坂本直子、名古屋国際で優勝している弘山晴美、大南敬美ら実力者を破ったVに、日本陸連・沢木啓祐専務理事も「25キロ過ぎから若さが爆発した。ラスト2.195キロも極めて速かった」と高く評価する。
県立西宮高を卒業する際、進学を勧める両親を説得し、「もっと速くなりたい。将来はマラソンを走りたい」と熱心に勧誘してくれた武冨監督を慕って天満屋に入社した。2年前から照準を定めていた今回の挑戦。高校時代の恩師、萩原健吉前監督(現兵庫県教委勤務)から授かった「心抑体駆(しんよくたいく)」の言葉を体現し、冷静に尾張路を駆け抜けた。4月1日が22歳の誕生日。ニューヒロインは、北京でさらなる輝きを放つ。
(臼杵孝志)
■中村 友梨香(なかむら・ゆりか)
★生まれ 1986(昭和61)年4月1日、京都・福知山市生まれ、21歳。1メートル66、48キロ
★競技歴 1歳で西宮へ移り、夙川小では水泳に打ち込む。大社中から陸上部に入り、県立西宮高2年のとき、千葉国際クロスカントリー・ジュニア4キロで優勝。3年時に全国高校駅伝、都道府県駅伝に出場。04年に天満屋へ入社し、05年世界クロスカントリー・ジュニアの部15位。昨年12月の全日本実業団駅伝で3区10キロを走り、日本人歴代1位の31分30秒をマーク
★きちょうめん 高校時代は、部員の日課だった練習日記を1度も遅れず監督に提出。所属先の合宿では、知人に絵はがきで近況報告する
★趣味 料理とスーパー銭湯巡り。高校時代の課外研修では、温泉のリポート7枚を提出
★家族 父・香澄(かずみ)さん(50)、母・宮子さん(49)、弟・宣仁さん(20)、妹・麻友香さん(18)

★両親もビックリ!!
中村の両親=写真右=は地下鉄で移動しながら2カ所で応援したが、終盤に競技場の最寄り駅を出たところで独走する娘と遭遇。父・香澄さんは約100メートル並走し、娘に向かって声を張り上げた。「まさか1位で帰ってくるとは…。夢のようです」。この日は初孫の中村をかわいがり、平成元年に死去した母方の祖父、前川哲男さんの誕生日。祖母・つね子さん(81)から「おじいちゃんに頼んでおくわね」とメールが届いていた。おじいちゃんの笑顔が思い浮かぶ。
★天満屋・武冨監督も驚き隠せず
中村のロングスパートに、天満屋・武冨監督も驚きを隠せなかった。「正直、最後までもつか不安だった。残り10キロをよく頑張りました」。大阪国際は同じ天満屋の森本が日本人トップの2位。どちらが選ばれるにしても、天満屋はシドニー五輪の山口衛里、アテネ五輪の坂本直子に続き、3大会連続で代表を送り込むことになる。同監督は「今回はタイムより勝負を優先した。あとは上(日本陸連)が決めることです」と複雑な表情。
■天満屋陸上競技部
天満屋は1829(文政12)年に創業した中国、四国地方最大の百貨店グループ(本店は岡山市)で10店舗を展開する。陸上競技部は1992年4月に創部。00年シドニー五輪女子マラソン代表・山口衛里、04年アテネ五輪代表・坂本直子と2大会連続で五輪ランナーを輩出。女子陸上界の強豪チーム。全日本実業団女子駅伝では98、05年に2位。07年大会は3位だった。武冨豊監督。所在地は岡山市表町
■経過
序盤から有力選手がけん制し合ってスローペースとなったレースは、高橋が9キロ手前で先頭集団から遅れる予想外の展開。25キロすぎに原が仕掛け、折り返した後の28キロ過ぎには坂本が先頭に出るなど目まぐるしい駆け引きが始まった。先頭集団が6人に絞られ、31キロすぎの上り坂で今度は堀江がスパート。原や坂本は引き離されたが、32キロすぎに初マラソンの中村が先頭の堀江をとらえ、力強い走りで一気に前へ出た。終盤は尾崎や加納も懸命に食い下がったが、中村が逃げ切った。
★陸連・沢木理事も高評価
男女マラソンの北京五輪代表各3人は10日の日本陸連理事会、評議員会で正式決定する。女子は昨年の大阪世界選手権銅メダルの土佐礼子(31)=三井住友海上=が既に決まり、昨年11月の東京国際を制したアテネ五輪金メダルの野口みずき(29)=シスメックス=も確実。事実上の残り1枠は、初マラソンで優勝した中村友梨香(21)と1月の大阪国際で日本勢トップの2位となった森本友(24)=ともに天満屋=との選考になるが、実力者がそろった名古屋国際で優勝した中村で決まる見通しとなった。
中村の2時間25分51秒のタイムは、森本の2時間25分34秒を17秒下回る。だが、日本陸連・沢木啓祐専務理事は「これだけのメンバーで勝ったことを尊重したい。30キロからのタイムは極めて速い。(選考は)記録だけでない部分もある」と高い評価を与えた。
高野進強化委員長も中村に「終盤の切れある走りは力がないとできない」と期待感を口にした。北京五輪で3連覇がかかる日本の女子マラソン代表トリオの選考は、難航しないとみられる。
★最終切符“尾張”名古屋は大波乱
◆2大会連続の五輪代表を目指した坂本直子(天満屋)は10位に沈み、目を赤くした
「自信はなかったが、わたしも走ってるんだというのを応援している人にアピールしたかった」
◆39歳でマラソンでの五輪初出場を狙った弘山晴美(資生堂)は、29キロで脱落して9位
「前半は調子よかったのに、走りづらかった。残念といえば残念だけど、ここまでよくやった」


◆初マラソンの尾崎好美(第一生命)は2位。今後はトラック種目で北京五輪出場を目指す
「1位が見える位置でのゴールで悔しさが残る」