【第83号】富山英明−「現役最後の試合」で金決める
(84年ロサンゼルス・レスリング・フリースタイル57キロ級)
★開会式の“カメラ事件”も笑い話に

1984年ロサンゼルス大会レスリング、フリースタイル57キロ級決勝でデービスを破った富山英明(共同)
「やっと12年が終わった。これが現役最後の試合です」。決勝で、地元米国ファンの声援を一身に受けたデービスを一方的に判定で下すと、27歳の富山は、せきを切ったようにこう話した。
78、79年の世界選手権王者。80年のモスクワ五輪は、柔道の山下と並び絶対の金メダル候補に挙げられていた。
テレビ観戦した五輪では自分が苦もなくひねってきた相手が表彰台の1、2、3位。翌年には首を痛めて世界の王座からも転落。競技に集中できず、国内の五輪予選では危うい場面も何度かあったほどだった。
そんなベテランを燃えたせたのは五輪への思い。茨城・明光中2年からつけはじめた日記には、「五輪で金メダルをとる」と書き、猛練習で体をいじめぬき、「ラウンドが進むほど富山は元気になる」といわれる驚異のスタミナを築いた。
ちゃめっ気あふれる性格から、開会式ではちょっとした騒動も。五輪憲章で禁じられているカメラを持ち込み、お堅い選手団本部におキュウをすえられ、強制送還まで話題にのぼった。
宿願を果たした男は、「観戦してもらって一度も負けたことがない」という祖父・竹三郎さん、日大時代の同級生で婚約者の松田幸子さんと抱き合って喜びを分かち合った。

