夏季五輪ヒストリー

【第56号】加藤喜代美−変身、攻撃レスリングで頂点に
(72年ミュンヘン・レスリング・フリースタイル52キロ級)

★前年の世界選手権6位の屈辱晴らした
加藤喜代美

1972年ミュンヘン大会、レスリング・フリースタイル52キロ級で優勝を決めて喜ぶ加藤喜代美

アニマル二世。五輪の舞台で、懐かしいニックネームが紙面に躍った。

不本意な汚名を、見事に返上した。24歳の加藤にとって、五輪の舞台は、男の意地をかけた戦いだった。

1回戦で強豪ゴルバニ(イタリア)にフォール勝ちして波にのり、決勝リーグでも、キム(北朝鮮)、アラクベルディエフ(ソ連)を圧倒。終了のブザーに、「やったぞ」と大声で叫び、ジャンプ。大粒の涙がほおを伝った。

五輪前年の世界選手権。期待外れの6位に終わった加藤を待っていたのは、「攻めないで負けた」という消極性を責める周囲の声。加藤の耳には、「選考会で優勝しても五輪には出さない」との声さえ伝わってきた。

金のみを評価するレスリング王国ゆえの重圧。別人のような猛烈な攻撃レスリングで五輪代表の座を勝ち取った加藤は、「先輩たちは、おまえは積極的でないからダメだと言うけど、そんなことはない。ミュンヘンでは死にものぐるいでやる。ちくしょう」と悔し涙を流した。

その言葉通りの快勝で、このクラス(旧フライ級)日本の五輪3連覇を達成した。

専大時代に、同級生で卓球部主将だった平野美恵子さんと婚約。五輪のために1年間結婚を延期して大輪を咲かせた。