2008年04月10日 更新
ホレボレしまっせ!“男”下柳、竜斬り7回2安打無失点2勝目

盟友のために左腕を振り抜いた下柳(撮影・林俊志)

藤川からウイニングボールを受け取った下柳
(セ・リーグ、阪神2−0中日、2回戦、阪神2勝、9日、甲子園)阪神・下柳剛投手(39)が中日打線を7回2安打無失点と手玉にとり、堂々の2勝目。金本知憲外野手(40)の通算2000安打がお預けとなった分、同学年のベテランが男気と鉄腕ぶりを見せ、熟成されたワインのような投球で、甲子園を酔わせた。
◇
盟友の大記録に花を添えようと、ガムシャラに左腕を振った。脇役に徹する。その思いが最高の結果につながった。気が付くと自分自身が主役になっていた。勝利を呼んだのは、下柳だった。
「いつも以上の気合? カネが打って負け試合というわけにはいかんやろ。少しでも長いイニング? それはそうよ」
負けられない試合だった。同学年の金本が2000安打にあと1と迫っていた。達成の瞬間を、みんなで笑えるように、白星にこだわった。
三回は先頭の森野に右越え二塁打を浴びたが、後続をピシャリ。四回、井端の遊撃内野安打から招いた二死一、二塁の危機でも、中村紀をシュートで一ゴロ。五回以降は無安打に封じ、7回無失点。許した安打は2。完ぺきな竜倒劇だった。
気心が知れた仲だからこそ思い入れがあった。節目の試合を迎える前に、下柳は金本に問いかけていた。
「ワイン飲むか?」
返答は「おう、飲むよ」。左腕は「じゃあ用意しとくわ」と笑顔で話を終えた。外国映画のように、短くもイキな男と男の会話。2000安打の記念品がこの瞬間、頭に浮かんだ。候補は超高級ワインの『シャトー・ラトゥール』。物によっては数十万円といわれる一品の準備に着手した。
「みんなで祝うぞ」
チーム内にも率先して声をかけた。「シモさんが音頭をとって祝うって話が出てるみたい」と親しい関係者。同い年の友人の大記録を、他人事とは思っていなかった。
前日8日の中日戦でも、登板前日にもかかわらずベンチ入り。身を乗り出して“その時”を待っていた。結局、偉業はまたお預けとなったが、背番号6を後押しする好投は、チームに極上のプレゼントとなっていた。
「走者を背負ったけど、ピンチらしいピンチはなかった。本当に安定していた。こっちも安心してたよ。完封もいけた」と岡田監督も最敬礼だ。
開幕から4カード連続で勝ち越し、9勝2敗で2位・中日に2.5ゲーム差。最高のスタートダッシュに成功した。互いを思う固い絆が勝利を生む。結束を強めた猛虎が、簡単に負けるはずがない。
(森井 智史)
■下柳の鉄腕ぶり
ダイエー時代の93年は50試合に登板(先発9試合)。中には2回2/3を投げセーブ、中1日で先発し7回勝ち投手になったことも。94年は62試合に登板。「アイアン・ホーク」と呼ばれた。日本ハムでは97年から3年連続で60試合以上に登板。97年は65試合、合計147回を投げ1試合平均2.26回。これは昨年、90試合登板の日本記録を達成した久保田の平均1.20回(108イニング)を上回る。
■データBOX
下柳が2試合連続で7イニング以上投げたのは、06年8月30日の中日戦(甲子園)と9月9日の横浜戦(同)以来で2年ぶり。昨季は6イニングが最高だった。
★開幕から4カード連続の勝ち越し
阪神が中日に連勝し、開幕から4カード連続の勝ち越しを決めた。横浜に○○○、広島に○○●、巨人に○○●、中日に○○。勝った試合はすべて先発投手に白星がついている。開幕からの球団記録は02年の5カード連続。
★文句なし…肩の力抜けている下柳
立ち上がりに難がある下柳だが、すんなりと試合に入っていた。いつもより腕が振れていたため、中日打線に最後まで的を絞らせなかった。右打者から見たアウトコースにはシンカーとフォーク、インコースにはスライダーを、それぞれコーナーに投げ分けていた。文句のつけようのないピッチングだった。
昨年は開幕投手を務め、今季は5番手。この位置づけがチーム内での力量を示すものではないが、結果的に下柳は肩の力が抜けている。余計な重圧がないため、力をより発揮しやすい環境が整っている。
チームは4カード連続の勝ち越し。中日との2試合を見ても打線はひけをとらない。ただ、気になるのは点を取った後、一気にたたみかける勢いがないことだ。毎試合、僅差で終盤を迎えれば、久保田、藤川に連投を強いることになる。試合を決める打線の集中力が今後の課題になる。
(八木裕 サンケイスポーツ専属評論家)
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◆下柳について阪神・久保チーフ投手コーチ
「向こうの早打ちに助けられた。走者を背負って慌てる投手じゃないからね。勝っているとゆっくり(投げることが)できる」