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【今岡・独占V手記】岡田監督、無言の信頼ありがとう

スマイル今岡

スマイル今岡 驚異の144打点でチームを優勝に導いた今岡。もちろんMVP候補だ=撮影・中島信生

監督を胴上げしたら、もう野球をやめてもいい。大げさかもしれないが、そのくらいの気持ちだった。監督を男にしたかった。自分が一番しんどかったとき、助けてくれた人。打撃を教えてくれたり精神的なアドバイスをくれたり…。

今でも監督の顔を見ると二軍の時を思いだす。黒潮リーグや秋季キャンプ、ファームに落ちていたとき。言葉だけなら誰でも言える。ずっと見て接してくれた。そういうことがうれしかった。監督は「もっとおれ、できるんじゃないか」と感じさせてくれた。

今年、監督に初めて試合中に声をかけられたことがあった。6月24日の巨人戦、サヨナラ犠飛の時だった。若い投手が投げる試合前「ピンチではマウンドに行ったってくれよ」と言われることはあっても、試合中はなかった。だからあの時はすごくチビった。

ネクストサークルで自分の世界に入っていたら、何か声がして、パッと見たら監督がいた。「お前、決めてこい」。それしか覚えていない。ただそこから打席に入るまでの20秒くらい、足を慣らして構えるまで、色々なことを考えた。あれ、もしかして初めてやな、こんなこと言われたの。うわ〜絶対打たなアカン。そういうチビり。若いころから、緊張することはあってもチビったことは初めて。緊張や不安を通り越した。あの心境は忘れられない。

最近、息子の稜が野球をわかり始めた。これまでおやじが出ているから見ていただけだったのが、今はメジャーも高校野球も全部見る。野球が好きなんだ。おれの子供のころと同じ。そして、野球の話をしてくるようになった。

「三振したでしょ」「ホームラン打ったね」。嫁に聞いたら、ずっと見ているって。そういう年になったんやなあと。うれしいというより、責任が出てくる。やっぱりかっこいいお父さんじゃなきゃアカンって。9月4日の6歳の誕生日には、自分と同じモデルのグラブを贈った。前は素手でキャッチボールしていたけれど、昨年のクリスマスに最初にあげてから、今はグラブを持ってね。

今年は、屈辱を晴らしたという気持ちがあった。去年4位でも周りから最下位みたいに扱われて…。このチームは優勝せなアカンと感じた。今に見とれと思った。今年の2年ぶりの優勝で、これから環境の変化がすごく起きると思う。

2位でも許されない。この先ずっと、優勝じゃないとアカン。それが人気球団の、タイガースの選手としての使命、責任。常勝とみられることを、選手が自覚していかないといけない、と強く思った。

(阪神タイガース内野手)

■今岡 誠(いまおか・まこと)

昭和49年9月11日、兵庫県生まれ、31歳。PL学園高では3年時にセンバツ8強。東洋大では1年春に本塁打と打点の2冠を獲得。4年時の96年アトランタ五輪で銀メダル。平成9年ドラフト1位で阪神入団。同15年には18年ぶりのリーグ優勝に貢献し、自身も打率.340で首位打者。ベストナインとゴールデングラブ賞も受賞した。今季、二塁から三塁へコンバート。今季成績は141試合で打率.281、28本塁打、144打点。通算成績は1043試合で打率.290、103本塁打、500打点。1メートル85、81キロ。右投げ右打ち。既婚。年俸2億5000万円。背番号7。