勢いが止まらない。巨人の4年目・松原聖弥外野手(25)が今季、1軍デビューから初安打、初適時打、初本塁打と大きな成長曲線を描き続けている。
仙台育英高、明星大を経て、育成ドラフト5位で2017年に入団。高校時代はレギュラーではなく、甲子園で活躍するチームメートをアルプススタンドで応援する側だった。
大学時代、一人の恩師との出会いが、野球人生が変わる一つの転機となった。入学当時、明星大の監督を務めていた浜井●(=さんずいに項)丈さん(72、現名誉監督)は、かつて社会人野球・大昭和製紙、ローソンなどで監督を務めていた名将。足が速く、器用なタイプの選手を好む浜井監督の目にとまり、松原は1年春から出場機会をつかんだ。
なんと1年春の開幕戦で「4番・DH」でスタメンに大抜擢(ばってき)された。しかし4打席で4三振と結果を残すことができず、試合後に監督の元へ足を運んだ。
「監督、明日は勘弁してください…」
しかし浜井さんは翌日も「6番・DH」で松原をスタメンに起用。すると「たしか二塁打を2、3本打ったんですよ。『やっぱりこの子は違う』と。切り替えがうまい。何より、野球のセンスを感じました」と浜井さん。一夜にして名誉挽回を果たした姿に、期待を隠せなかった。
その後は監督の意向で、1年生の間は外野手転向に向けた基礎練習やウエートなどの体力強化に時間を割き、地道な努力を継続。2年春から再び試合に出始めると、5季連続で首都大学リーグのベストナインに選出されるなど存在感を発揮した。チームの1部昇格にも貢献。浜井さんは「他のドラフト候補と比べたら目立たなかったと思いますが、ジャイアンツのスカウトの方が見つけてくださって。今も、指導者の方に恵まれているんでしょうね。いろんなことを吸収して、いい努力をしているんだなと思いました」と、教え子の活躍がうれしそうだった。
初本塁打を放った3日のDeNA戦(東京ドーム)後には「野球人生で、悔しい期間が長かった。見返してやろうという気持ちが糧になっています」と力を込めていた松原。9月7日までに30試合に出場。8月は打率3割と打ちまくった。めきめきと頭角を現し始めた25歳が、終盤戦のキーマンとなる。(箭内桃子)