サンケイスポーツ専属評論家の江本孟紀氏(72)が、オープン戦で最下位に沈んだ巨人に向けて、「鬼」アドバイス。かつての名門球団、南海ホークスが残した伝説を、とくとくと説いた。 (構成・内井義隆)
――巨人は2勝10敗4分けと、散々でした
「オープン戦で8連敗以上を喫すると、レギュラーシーズンで優勝できない…なんていうデータが紹介されているけど、そんなもん、気にすることはないよ」
――最下位でしたが…
「野村克也さんも、きっと天国から『ワシらの時代、オープン戦最下位からの優勝は、当たり前やったで』と言うんじゃないかな」
――野村さん、というと…
「鶴岡一人監督率いる南海ホークスの伝説よ」
――1950-60年代の黄金期ですね
「当時は野村さんが4番で、大エースの杉浦忠さん、韋駄天の広瀬叔功さんら、役者がそろった、おとなのチームだった」
――はい
「で、キャンプからオープン戦までは、ちんたらちんたら、やっている。ユニホームを着たままマージャン卓を囲むわ、そのまま飲みに行くわ…。そりゃ、最下位にもなるわな」
――今では考えられません
「ところが、オープン戦が終わり、開幕まで1週間となると、目の色が変わる。気合を入れ直す。地獄のような猛練習が始まるんだ」
――地獄、ですか
「ランニングにつぐランニング。ノックの雨あられ。誰ひとり、冗談ひとつ言わない。ミスでもしようものなら、怒鳴り合う」
――厳しい…
「ここからが俺たちのシーズンだ、さあ切り替えるぞ-という、強烈なプロ意識を持っていたんだ」
――そうでしたか
「だから巨人だって、今からでも遅くない。原監督が『鬼』と化して、猛練習をすればいいんだ。選手のコンディションなんて、うかがっている場合ではないぞ」