あえて重圧をかけない指導法が現代風だと感じる。安全圏のボール球で空振りを誘うのも技だが、巨人・杉内俊哉2軍投手コーチ(39)が若手に求めるのは、痛打を恐れない正面突破だ。
「フォアボールはOK。打者との対戦を楽しんで来い!」
2017年に現役引退し、ファームで若手投手の指導者となって3年目の杉内コーチは、試合前のミーティングで投手陣に、そう声をかける。
四球は、打者に安打を許さずして走者を背負い、守備陣のリズムも乱す悪とされる。ソフトバンク、巨人で現役通算142勝左腕のコーチも当然、理解している。無駄な四球を減らすため、あえて逆説的な伝え方をしているのだ。
「セ・リーグの野球は四球が命取りになるといわれるけど、あまり意識しすぎると腕が振れなくなるから。思い切っていけということ」
力と力の真っ向勝負というイメージを持たれるパ・リーグとは対照的に、緻密な野球と評される細かな駆け引きが繰り広げられるセ・リーグ。杉内コーチの経験則では、四球に対する見方はセの方が厳しいという。「四球を出すな」ではなく、「出してもいいから思い切って投げろ」ということで、選手たちには開き直って質の高いボールを投じることを期待している。
杉内コーチは「困ったら真ん中の真っすぐでファウルを取る、ぐらいじゃないとね」とも語っていた。ストライクゾーン内での勝負で抑えるためには、変化球や直球の切れが必要となるのはいうまでもない。ごまかしの利かないゾーン内で自身の球を磨け、ということだ。「フォアボールOK」の奥には、そんなメッセージも込められている。
鋭く腕を振るフォームから、140キロ台の直球とスライダーで三振の山を築いた新世代コーチの教えが、投手陣に浸透してきている。(谷川直之)