春季キャンプで王会長(右)から指導をうける上林。周囲の期待は絶大だ ソフトバンク・上林誠知外野手(22)の今季1号は球界屈指の右腕からだった。6日の楽天戦(楽天生命パーク)の五回、エース・則本昂大投手(27)から左中間へ。試合後は、謙虚さと闘志が同居した若鷹らしい言葉で振り返った。
「2ボールで、点差も離れていて、8番打者でなめてきたところを」
好投手を攻略した自負はなかった。5点を追う走者なしの場面。「(則本の)気持ちもギータさん(柳田)に対してと違うのも、みて分かりました」。本気の球を打ち返したわけではないという敬意に「いつかは…」という意地ものぞかせた。
日頃からそう。調子に乗った素振りは決してみせない一方、強気な言葉も残す。自主トレの師である内川聖一内野手(35)を尊敬しつつ「なにかひとつ成績で勝ちたい」と挑んだ。柳田悠岐外野手(29)についても「いつかは超えていかないといけない存在」と語る。今回もそんな性格が表れる。
周囲の期待は絶大で、一発を特に喜ぶのは王貞治球団会長(77)だろう。キャンプから背番号「51」に注目し、オープン戦も球場に来る度に「上林の打撃は何時から?」と熱視線を送った。直接指導も恒例。試合中に気が付いたことをその場で記した直筆メモまで用意した。
助言で目立つのは「練習ではできているんだから」という言葉。上林は愛情に感激しつつ「会長に言ってもらえるから、思いきってできる」と自分を貫く武器にも変えた。「球場にいなくても、いつもみているぞ」とも伝えられている。今季1号も届いたはずだ。
埼玉県出身で宮城・仙台育英高出。第2の故郷でプロでは初めてのアーチで、チームで唯一の開幕から6連続試合安打も続けた。「(安打は)止まってもバントや四球でも、一日ひとつ何かできれば」と冷静。昨季も前半は大活躍した。後半は不振で、何もできなかったポストシーズンは涙もみせた22歳。思い出の地で、再出発の1本だ。(安藤理)