懐かしい顔がヤクルトの愛媛・松山キャンプに加わった。2013-15年まで在籍した江村将也氏(30)だ。11月6日から5日間、打撃投手の入団テストとして、キャンプに参加。かつての仲間を相手に登板した。
「ピッチングコーチもしていますし、バッティングピッチャーも毎日していました。ボールがすごく投げやすかった。ユニホームも着させてもらっただけありがたい。幸せです」
ヤクルトを退団後は、16年にBCリーグ・福島に入団。今季からは四国アイランドリーグ・香川の投手コーチに就任していた。
「ヤクルトの江村」と言えばあの試合が思い出される。2013年4月23日の広島戦(神宮)。同点の八回二死一、二塁の場面から登板し、迎えたのはレジェンド・前田智徳だった。カウント2-2から投じた1球は、前田の左手首に当たる死球に。前田は激高し、その後、左尺骨を骨折したことが判明。同年限りで引退した。
「前田さんが引退をした後に、マツダスタジアムに解説をするために来ていたんです。そのときに、ごあいさつをして、あのときのことを謝ったら『いつの話をしとんじゃ』と言ってくれたんです」
江村氏にとっても、前田氏にとっても、大きな1球となった。だが、前田氏の心の大きさに江村氏は救われたという。「ずっと気にしていてくれたみたいで。その後も『球が力強くなってきたな』とか、『弟も頑張っているな』と声をかけてくださった。本当にいい方だなと思いました」と振り返る。
続きはまだある。その後、年賀状のやりとりをしたいと知人を通じて伝えたときのことだ。「そんなこといいよ。もっとやることがあるだろ?」と気を使った言葉をかけてくれたのだ。「すごくいい方です」と江村氏。1球で変わった人生。だが、自身のことよりも相手を気遣うレジェンドの姿勢に、江村氏も救われたのだ。(赤尾裕希)