2017.10.25 08:00

【佐藤春佳のスポーツブレーク】広島を“走れるチーム”に変えた河田コーチ

【佐藤春佳のスポーツブレーク】

広島を“走れるチーム”に変えた河田コーチ

特集:
佐藤春佳のスポーツブレーク
5回、ベンチから指示を出す広島・河田コーチ=マツダスタジアム(撮影・鳥越瑞絵)

5回、ベンチから指示を出す広島・河田コーチ=マツダスタジアム(撮影・鳥越瑞絵)【拡大】

 お化けカボチャにゴースト…。ハロウィーンが日本の秋に“定着”したのは、ここ10年ほどのことだろうか。子供たちはお菓子だ、仮装だと忙しい。幼稚園や児童館の行事に加え、昨今は商店街など街ぐるみのイベントも盛んだという。

 お化け、では失礼極まりない。妖怪人間…それも失礼だ。37年ぶりにセ・リーグ連覇を果たした広島に、他球団を恐怖に陥れる名コーチがいる。「早く人間になりた~い!!」。数年前にバラエティー番組で、とんねるずからアニメ「妖怪人間ベム」の主人公に似ているといじられた河田雄祐外野守備走塁コーチだ。

 広島、西武での現役時代は俊足堅守の外野手。引退後はコーチとして手腕をふるい、2年前に旧知の緒方監督に請われて古巣に復帰した。ギョロリとした“眼力”と熱心な指導で、2015年にリーグ4位の80個だったチーム盗塁数は16年に118個、今季は112個と激増した。

 ベムさまの“幻術”の正体は、選手に『根拠』を示し、能力を発揮させることだ。就任当初のチームを「何でもかんでも走っているように見えた」と振り返る。骨身を惜しまず分析する対戦相手のデータや独自の走塁理論は『道筋』となり、『勇気』に変わった。

 「以前は完璧に条件がそろわないと、勝負できなかった。河田コーチが“自信をもっていけ。アウトになっても根拠があればいいんだから”と背中を押してくれた」と話すのは今季、代走で50試合に出場した野間だ。15年にリーグワーストの50個だったチームの盗塁失敗は、今季は40個。『根拠』を携え、先の塁を狙う意識が根付いた。

 35盗塁で初タイトルを獲得した田中は、15年はわずか6盗塁。「打撃だけじゃ駄目」と発破をかけられ、課題のスタートなどを二人三脚で取り組んできた。師匠は「走るべき場面で体と頭が一致して、きちんと準備できるようになったね」と目を細め、弟子は「全ての意識が変わりました。退任される年にタイトルが取れて本当に良かった」と胸を張る。

 家庭の事情などもあり、名コーチは今季限りで退任する。信頼で結ばれ、ともに愛犬家の緒方監督からは「河田さん、広島で何かやり残したことはないの?」と聞かれたそうだ。

 「ない、と答えたよ。自分の思ったことを選手に言えたし、やりたいことは(監督に)大概やらせてもらったからね」

 ハロウィーンの起源でもある「収穫」の秋。走塁改革が実ったリーグ連覇と、たくましく育った選手たちを置き土産に、愛されキャラの「ベムさま」が広島を去る。

佐藤 春佳(さとう・はるか)

 サッカー、アマチュアスポーツ担当として2004年アテネ五輪、10年バンクーバー冬季五輪を取材。プロ野球は05-07年に巨人を担当し、13-15年はヤクルト担当キャップ。習い事マニアだがバイオリン、ボクシング、短歌、アーチェリーなど軒並み挫折。趣味は宝塚観劇。

今、あなたにオススメ
Recommended by
  1. サンスポ
  2. 野球
  3. プロ野球
  4. 広島
  5. 【佐藤春佳のスポーツブレーク】広島を“走れるチーム”に変えた河田コーチ