ロッテは10月31日、小谷正勝2軍投手コーチ(71)の今季限りでの退団を発表した。シーズン終了後に辞任を申し出て、球団側は強く慰留したが、今年は翻意させることができなかった。
実は小谷さん、昨オフも辞任の意向を球団側に伝えた。しかし、「辞められては困る」と球団幹部が説得。最後は伊東監督までが直接出馬し、留任にこぎつけた。
「なんでワシが辞めたい…というとるのに、辞めさせてくれんのや。おかしな話やろ。もちろん、ありがたい気持ちでいっぱいやけどね。引き受けたからには、無責任なことはできん」
今年1月、新人合同自主トレの頃だった。小谷さんが明かした胸の内だ。「もう、本当に今年一年!!」という決意のようなものも感じた。
「続けたい」「続けさせてほしい」とお願いしても、「いいから辞めて」という扱いが珍しくないコーチ業。小谷さんのようなケースは超レアといっていい。
大洋、横浜(現DeNA)、ヤクルト、巨人でコーチを歴任し、2013年にロッテ入団。コーチ歴だけで軽く30年を超える名伯楽は、幾多の名投手を育て上げた。コーチでの空白期間は巨人からロッテに移る12年の1年だけ。常に引っ張りだこの存在だった。
「ロッテさんにも、お世話になった。球界へのご奉公もこれでおしまいや」という小谷さんは、ここ数年、ひそかに次のステージに向けた準備を着々と進めていた。
青少年の健全な体と心の育成を目的とした「小谷塾」の設立。野球を通じた社会貢献を「ライフワークにしたい」と考えている。
「プロ野球に入ってくるような選手でも、並外れた身体能力やセンスだけで、何も教わってきていない子が多い。教わっていないから、教えられること自体に抵抗を感じる。技術的な基礎は大事。そういうものを教えられたらいいし、また最近は社会で変な事件も多い。今の時代、心の教育も大事やぞ」
球界の名伯楽から「世直しの塾長」へ。その周辺には賛同者も多い。来年早々にも開塾に向け動き出す小谷さんは、記者の顔をマジマジと見ながら、「オマエさんは塾生やな。特別に入れたるわ」。まだまだ修業が足らないようです。(西村浩一)