
鶴岡監督【フォト】
胸を張れる話ではないのであまりいいたくはないのだが、わたしがアナウンサーとして社会人になったばかりのころ、プロ野球南海ホークス(当時)を取材していた。
試合前、ベンチで鶴岡一人監督に質問した。おそらく、まだ若造でイキがっていたようにみえたはずだが、大柄でグレーのユニホーム、しわがれ声、浅黒い顔と鋭い目、それをみただけで圧倒されてしまった。
鶴岡監督はジロリとわたしをみた後、「おめぇ、もうちょっと勉強してこい!」といわれた。翌日、その日の試合を自分なりに分析、聞きたいことをメモして、再度、鶴岡監督に質問した。また、ジロリとみられたが、「おー、おめぇかぁ、少しは勉強してきたな!」と付け加えてくれた。うれしかった。それからが大変だった。会うたびに、「きょうは何を聞きたい?」とくる。足を運ぶたびに考えなければならなくなった。しかも、そのたびに「そんなことも知らねェのか?」と返された。
のちのち、考えてみると、この鶴岡さんへのインタビューが、取材のコツを教えてくれたように思う。
かつては、インタビューされる側が質問をよく聞き、内容がわからないと質問者に聞き返してきたものだ。プロ野球のある日本シリーズの初戦。勝利監督へのインタビューで、質問する側が長々と話した後、「優勝した○○監督です!」とマイクを向けた。その監督は「君は何を聞きたいんだね」と切り返した。以前はこういう人が多かったと思う。
例えば大相撲の力士。われわれのころは鼻息と「ごっつぁん」しかなかった。それに比べ、現在はマイクさえ出せば答えてくれる選手が多い。サッカー選手へのインタビューで「ナイスゴールでしたァ!」とマイクを出すケースをよくみるが、その先は、どうだろう。
昔の人は口を開かない。やっと引き出した返答のなかから「つまり、それはどういうことですか」「ということは?」とさらに突っ込む“勝負”があった。現在はそれがほとんどみられないから深みのある話に発展しないようにみえる。
スポーツに限らず、質問するとき「教えてください」「聞かせてください」という聞き方をすると、公式発言にかわる。当たり障りのない無難な答えになる。昔の人なら「いやだ」で終わる。「どうなんですか?」と聞くと「いやだ」とはいえなくなる(質問と答えを続けて口に出すとわかります)。今季も、選手とのやりとりが楽しみだ。
(紙面から)