ダルビッシュが雄たけびを上げた。4−2の五回二死満塁。元同僚の3番小笠原を121キロの内角低めのスライダーで空振り三振に仕留めると、ド派手なガッツポーズで感情をむき出しにした。
続く六回は4番ラミレスからを3人で仕留め、6回2失点で救援陣にバトンを渡した。
「今の状態では出来すぎ以上。50くらいの力が(声援で)70から80くらいになった。一世一代の投球ができました」
登板が絶望視されていた大舞台に、間に合わせた。今季は右肩の疲労などで出場選手登録を2度外れ、クライマックスシリーズ(CS)第2ステージは登板できなかった。本格的に投球練習を再開したのは10月26日。わずか6日前のことだ。
「先発は1週間くらい前に決まっていた」とダルビッシュ。だが、実戦は9月20日のオリックス戦以来42日ぶり。ブルペンで投げただけのぶっつけ本番に「まずストライクが入るか。打者が何を狙っているかを察する能力が落ちているんじゃないかと不安だった」と振り返る。それでも梨田監督は「ダルと戦ってきたシーズン。そのぐらいの覚悟はないと」とエースにマウンドを託した。
体調は万全ではなく、直球の最速は149キロ。手投げに近い状態で、歩幅を普段の6歩半から5歩半近くに縮めるなど工夫を凝らした。そして参考にしたのが、昨年の日本シリーズで巨人相手に好投した西武・岸の投球だった。この日の昼間、「そういえば岸さんは抑えていたな」と思いだし、動画投稿サイト「YouTube」でチェック。カーブを多投した。
指揮官からCSで登板させないことを言い渡されたときは「日本シリーズも無理だと思った」という。でも、投げたい。そんな右腕の背中を押したのは、CS第2ステージ第4戦に中1日で救援した楽天のエース岩隈だった。「あれでやらなアカンと思いました。(岩隈から)無理するなといわれていたけど、きょうは無理をさせてもらいました」
今後の登板について、梨田監督は「頭数に入れないものと思ってやる」と1試合限定の起用であることを示唆。しかし、シリーズの流れを変えたエースは「シーズン最後の試合。中継ぎでも何でも、いけといわれれば投げる準備をしておきます」と頼もしいセリフを口にした。(吉村大佑)