0−5の完敗。虎党のタメ息が聞こえた。歯を食いしばり、汗を流し、復帰への階段を一段飛ばしに駆け上がる。新井が、25日の中日戦で、9試合ぶりに実戦復帰する可能性が急浮上した。
「新井も、ゲームいけるかも分からんしな。なんとかみんなで、オールスターまであと5つな。それだけよ」
岡田監督が電撃復帰を示唆。「守備は大丈夫よ」。あとはスイングだけ。そのハードルを、FA砲が一気に飛び越えようとしていた。
16日のヤクルト戦(神宮)から「左第4、5腰椎椎間関節炎」でスタメンを外れ、劇薬の使用に踏み切った。名古屋遠征をキャンセルした18日。広島の大先輩、山本浩二氏(現北京五輪日本代表・守備走塁コーチ)の紹介で、大阪府内で神経ブロック注射を受けていた。06年に右太もも裏を痛めた清原(オリックス)も敢行した激痛を伴う荒療治。1日も早く復帰したい一念だった。
17日には精神面の“注射”も受けた。京都まで足を運んで、オフに護摩行を行う最福寺(鹿児島)の池口恵観法主から「気」を注入してもらった。
心身両面への“メス”が劇的な回復をうながした。20日にクラブハウスのリハビリ用プールでトレーニングを再開すると、22日はスタメン落ち以来、6日ぶりに新室内練習場でバットを振った。一夜明けると、鳥谷ら早出特打組に交じり、フリー打撃。約45分、全力スイングではないものの、打撃投手の緩い球を打った。
「順調です」
回復具合を問われ、ひと言だけ答えた。とめどなく流れ落ちる汗。動けるようになった。超人的な回復を物語っていた。
「22日と比べて多少、力を入れて振った。あとは持久力とかだね」と吉竹チーフ野手兼打撃コーチ。常川チーフトレーナーも「痛みは日に日に引いている」と証言した。
「9連戦を何とか乗り切った。新井がいないから、しゃあないよ、得点力が下がるのは。それでも五分くらいで、勝てる試合は勝ってきたし」
7月のヤマ場を4勝5敗と負け越した。だが、指揮官に悲壮感はない。中日が負け、優勝マジックは「45」に減った。新井が帰ってくれば、前半戦最後の5連戦をいい形で締めくくることができる。25日の甲子園。一塁ベース上に、背番号25の雄姿…。ファンだけだはない。新井自身が“奇跡”を信じている。(野下俊晴)