「(前夜にヒーローになった)葛城と同じくらいうれしいです!! 大きなチャンスということで、初球から打ちにいこうと思っていました」
1−1の八回。中日の投手は、4番手左腕・チェンに交代。一死後、林が放った痛烈な打球は一塁・ウッズの前でイレギュラーし、右前へ(記録は右前打)。続く鳥谷が、強くたたきつけた打球はワンバウンドで右翼線へ抜ける二塁打。決して綺麗な当たりではなかったが、執念が呼び込んだ一死二、三塁のチャンス。打席の矢野は「インコースにくる確率は高くなると思っていた」。
初球だった。内角高め145キロ直球。バットが真っ二つに折れた。左前へ落ちる決勝の2点打は、自身13試合43打席ぶりの適時打。岡田監督も「歩かされると思ったけど、よく難しい球を打ってくれた」と称賛した。
昨年12月の北京五輪アジア予選で打撃への「新たな感覚」をつかんだ。オフもバットを振り続け、今季に臨んだ。昨季の打率は.236。優勝に貢献した03年は.328、05年は.271。そして今季は.271。捕手が打てばチームが楽になることは承知している。
それでも一塁上での表情は険しいまま。すでに頭の中では最終回のリードをイメージしていた。
「自分は守備の人。オレが試合に出ている意味は、守るということ。打っても(うれしいという感情が)わいてこない。もっと喜んだほうが絵的にはいいんだろうけどね(笑)」
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