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王ジャパン、アメリカに“判定”負け…準決勝でリベンジだ!

イチロー

この悔しさは必ず果たす。試合終了の瞬間、イチローは仲間を励ましながらも、歓喜の米国ナインをにらみつけた=撮影・原田史郎

王監督

疑惑の判定変更に世界の王が激しく抗議する=共同

(WBC・2次リーグ1組、アメリカ4x−3日本、12日=日本時間13日、エンゼルスタジアム=田代学、大沢謙一郎、湯浅大、広岡浩二)世界の王が大激怒した。野球の国別対抗世界一決定戦、WBCは2次リーグ開幕、日本は米国と対戦した。同点で迎えた八回、犠飛で三走・西岡剛内野手(21)=ロッテ=が生還し、勝ち越し点を奪ったが、米国側が離塁をめぐって抗議し、不可解にも判定が覆された。勝ち越し点を失った王ジャパンは九回、アレックス・ロドリゲス内野手(30)=ヤンキース=にサヨナラ打を浴び、3−4で惜敗。王貞治監督(65)は残り2戦を勝ち抜き、18日(日本時間19日)の準決勝(サンディエゴ)で米国へのリベンジを誓った。

左手の人さし指を回しながら、背番号89が一塁側ベンチを飛び出した。不可解なジャッジ変更に、王監督の怒りのマグマは沸点寸前まで達する。ブーイングを受けながら、世界の王が5分間の猛抗議。だが再び判定が覆ることはなかった。

「一番近くで見てる審判のジャッジを変えるということは、私は日本で長年野球をやってきて、見たことがありません。野球がスタートした国でこういうことがあってはならない」

不可解シーンは3−3で迎えた八回一死満塁だ。岩村の左飛で三走・西岡が生還した。米国は西岡の離塁が早いとして捕手から三塁手にボールを転送したが、ナイト二塁審判はセーフの判定。ところが米国のバック・マルティネス監督(57)が抗議すると、ボブ・デービッドソン球審が認めたのだ。日本の勝ち越し点が消え、併殺となった。

デービッドソン球審は、タッチアップの判断は塁審でなく球審に権限あると王監督に判定変更の理由を説明。試合後、「離塁が早いと判断した」と声明文を出した。だが、テレビ中継では捕球後に西岡がスタートを切ったシーンが繰り返し放映された。権限うんぬん以前に、ミスジャッジは明白だった。

西岡

左犠飛で生還した西岡。この後、米国監督の抗議で判定は覆された=AP

野球の世界的な普及を目的とされたWBCで米国の圧力とも邪推されかねない誤審。王監督も「世界中の人が見ているのに。アメリカのためにもならんよ」と怒気を強めた。歴史的汚点の犠牲者となる形で、痛恨の1敗発進。だが、指揮官は帰り際、不可解な屈辱より、野球大国・米国を追いつめた戦いの内容に重きを置いた。

「もうその(審判の)話は横に置いておこうよ。アメリカとの真剣勝負の中でよくやった。イチロー、松井(秀)が、活躍するという環境に今、日本があるということをアピールできた」

初回に前日直接指導したイチローが先頭打者弾。強烈なUSAコールの中、足を絡めたしつこい野球も見せることができた。王監督は試合後、選手を集めていった。

「韓国、メキシコに勝って、もう1回アメリカとやろう!」

2次リーグを勝ち抜けば、18日(日本時間19日)の準決勝で再び米国と対戦する可能性もある。屈辱をエネルギーに換え、王ジャパンはリベンジの舞台に這い上がる。

★記者の目…問題は「米国びいき」ではなく審判の「技術レベル」

心配していたことが試合の重要な場面で起きてしまった。世界最高レベルの選手が集まった大会を判定するのがマイナーの審判。戦前から誤審が危惧されていた。

他のスポーツの国際大会では本来、審判も各国からの代表が招集される。サッカーでは第3国の審判が判定するが、野球ではまだ各国間でルール細部の解釈が違っているという理由で見送られた。メジャーの審判団とは報酬面で折り合いがつかず、審判組合がWBC参加を拒否。こうした経緯を経て3Aを中心に結成されたのが今回のWBC審判団だった。

ただ判定はこの日の審判団が地元の米国びいきだったとは思わない。むしろストライクゾーンは日本投手陣に甘い印象を受けたし、大リーグなら空振りと判定されるような日本選手のハーフスイングも「セーフ」と判定されていた。

問題は、やはり審判としての技術レベルだ。ボブ・デービッドソン球審は元メジャーの審判だが、衰えは隠せない。99年の審判組合ストライキの際に解雇され、現在もメジャー復帰を果たせていない。一方、塁審はメジャー昇格を狙う若手。大ベテランの球審が審判団のチーフだったことも“ツルの一声”で判定が覆った要因だろう。

一流選手の大会に二流の審判。そのツケを王ジャパンが大事な2次リーグ初戦で払わされた。

(大リーグ担当キャップ・田代学)

★米各紙は判定変更に批判的

西岡(ロッテ)のタッチアップでの生還の判定が覆ったことは、13日付の米各紙でも取り上げられ、判定変更に批判的な論調が目立った。USA TODAYは事の経緯を詳しく紹介し「テレビのリプレーを見る限り、西岡の判定を変えたのは間違いである」と主張。ニューヨーク・タイムズ紙は「野球を通じて友好を深めるはずの大会で、最初の事件が起きた」と批判した。

★中継局は判定を支持

日本ー米国戦を全米に生中継していたスポーツ専門の有線テレビ局「ESPN」は判定を“支持”した。何度も問題の場面を再生。「ハーフステップ(半歩)早かった。判定が覆ったのは正しい」と解説のリック・サットクリフ氏(49)は断言していた。

(アナハイム)

◆サンケイスポーツにコラムを連載している平林岳マイナーリーグ審判員(元パ・リーグ)

「米国では審判4人の責任分担が状況に応じて明確になっており、あの場面(一死満塁)のタッチアップは球審が判定することになっています。三走に最も近い三塁塁審は左翼への飛球を追い、二塁塁審はタッチアップの可能性がある二走も見ておく必要があるため、角度的に左翼手と三走の両方を見るのが難しいという理由で球審の担当になります。ですから二塁塁審は米国側からアピールされても『セーフ』と判定する必要はなかった。球審の判定を仰げばよかったのです」


◆現地で観戦した阪神・星野仙一SD

「球審に権限があるなら、二塁塁審がセーフと判定した瞬間に『いや! アウトだ』と言わなければいけない。米国の抗議でなぜ変わるのか。残念を通り越して情けない。これからは第3国の審判がやらないと」


◆日本サッカー協会・川淵三郎キャプテン

「現在、サッカーは第三国の人が審判を務めるのが当たり前。しかも大リーグの審判ならまだしも、世界一を決めるのが3Aの審判だったとは。改めるべきだし、WBCの汚点として残る気がする」

★ボビー憤慨「非常に残念」

米国−日本戦をテレビ観戦したロッテのバレンタイン監督は「最高の選手が試合をしたにもかかわらず審判が試合を決めた。非常に残念」と憤慨した。西岡の離塁が早いとの判定には「西岡にミスは見られない。ひどい判定だ」。さらに清水が投球前につばを球につけすぎとクレームをつけた球審を非難。「彼はボーク・ボブ・デービットソンとあだ名があるぐらいボークに神経質。目立ちたがり屋なんだろう。彼が球審だったのは日本には不運だった」と顔をしかめた。

(都内)

★コミッショナー事務局に抗議電話殺到

都内のコミッショナー事務局には、ファンから50件以上の抗議電話が寄せられた。誤審への批判や「王監督は選手を引き揚げるべきだった」という意見のほか、「米国大使館に電話したが取り上げてもらえなかった」という電話もあったという。またコミッショナー事務局の丸山博規則委員は、誤審の原因となった判定の変更について「確かにマニュアルでは三塁走者のタッチアップを確認するのは球審だが、二塁塁審が一度“セーフ”と判定してしまった以上はそちらが優先される。判定を変更した球審は、二塁塁審から相談を求められたのかが問題。そうでなければ球審の越権だ」と主張した。

★判定変更は提訴できず

アナハイム(米カリフォルニア州)12日=共同】WBC2次リーグ1組の米国−日本戦で、判定が覆って日本の勝ち越し点が取り消されたことについて、大会の技術委員を務める横浜の山中正竹球団専務は「アウト、セーフの問題なので、提訴の対象にならない」との見解を示した。

山中専務は試合直後、この試合を担当した技術委員や審判員スーパーバイザーらに判定変更について確認。その内容を「権限のない二塁塁審が最初にセーフ(離塁が早くない)の判定を出したが、本来は球審が判断するところ。その球審が『早いと見た』ということだった」と説明した。