2007年08月22日 更新

2007年 第89回全国高校野球選手権大会

旋風止まらず!“1回戦ボーイ”佐賀北が優勝王手!

佐賀北は二回、馬場のスクイズで田中(左)が頭から滑り込んで生還。捕手は上戸(撮影・榎本雅弘)

佐賀北は二回、馬場のスクイズで田中(左)が頭から滑り込んで生還。捕手は上戸(撮影・榎本雅弘)

 (第89回全国高校野球選手権大会、第14日、準決勝、長崎日大0−3佐賀北、21日、甲子園)快進撃を続ける佐賀北(佐賀)は、3−0で長崎日大(長崎)に快勝。94年に優勝した佐賀商以来、佐賀県勢として13年ぶりの決勝進出を果たした。初優勝をかけた決勝は、22日午後1時から行われる。

 春までは“1回戦ボーイ”だった。大変身の夏。佐賀北が来た。隣県、長崎との九州対決を1時間45分で制して決勝進出。百崎敏克監督(51)も、夢見心地でお立ち台に上がった。

 「九回二死になって、決勝に行けるのかと思ったらドキドキしてきた。信じられません。ただただ、驚いています」

 昨夏の佐賀大会は1回戦で敗れた。新チーム結成後も昨秋、今春ともに県大会は初戦敗退。チームが変わったのは、4月だった。百崎監督の指導方針に選手が反発。監督抜きの緊急ミーティングを開き、日頃の不満をすべて出し合った。

 「このままでいいのかと話し合いました。夢かもしれないけど、甲子園には出たかった」と今大会2本塁打の副島浩史三塁手(3年)。選手が出した結論は「監督を信じてついていく」だった。神埼高(佐賀)を率いた01年に春夏連続で甲子園に出場し、佐賀北の先輩でもある百崎監督に全部員の気持ちが伝えられ、チームは一つになった。

 この日の3点はスクイズ、相手暴投、犠飛。4安打で効率的に得点した。七回は浅い左飛に三走・内川聖弥内野手(3年)が迷わずゴー。「彼は足のスペシャリスト。走らなかったら怒っていましたよ」。無謀に映ったタッチアップも、選手を信頼しきった百崎監督には当然の策だった。

 先発の馬場将史投手(3年)が七回まで3安打無失点。八回から登板した久保貴大投手(3年)は甲子園での連続無失点を29回2/3に伸ばした。6月の練習試合では6失点で完敗した相手に、大舞台でリベンジした。部員全員が軟式野球出身。特待生問題とは無縁、エリート不在の県立進学校に、全国制覇のチャンスが到来した。

(臼杵孝志)

■佐賀北(さがきた)

 1963(昭和38)年に県立佐賀高が佐賀北、佐賀西、佐賀東の3校に分離して創立。普通科と普通科芸術コース、通信制からなる県立共学校で生徒数は953人(うち女子518人)。野球部創部は63年で部員数は60人。夏の甲子園は7年ぶり2度目(春はなし)。主なOBは岸川勝也(巨人・二軍打撃コーチ)、中越典子(女優)、吉田求(脚本家)。書道部は全国高校書道コンクールで12回連続日本一に輝いている。所在地は佐賀市天祐2の6の1。山崎俊介校長。

■データBox

 〔1〕佐賀県勢の決勝進出は、94年の第76回大会で優勝した佐賀商以来13年ぶり
 〔2〕公立高校の優勝となれば、96年の第78回大会の松山商以来11年ぶり
 〔3〕「地名+方角(東西南北)」がつく学校で優勝したのは、50年の第32回大会の松山東(現松山商)だけで、優勝すれば57年ぶりとなる。ちなみに「県名+方角」の優勝は史上初
 〔4〕引き分け再試合を制した学校の優勝は、69年の第51回大会の松山商、06年の第88回大会の早実以来となるが、ともに決勝再試合での優勝で、決勝以外で再試合を制した学校での優勝はこれまでない
 〔5〕甲子園開幕カードを勝って優勝した学校は、計7校。現在の参加49校が恒例となった78年の第60回大会以降では、94年の第76回大会の佐賀商以来13年ぶりとなる
 〔6〕佐賀県出身の監督が決勝進出を果たすのは、4年連続。佐賀商出身で駒大苫小牧で指揮を執った香田誉士史監督が04年の第86回大会から3年連続で進出し、そして今大会の佐賀北・百崎敏克監督が続いた
 〔7〕佐賀県勢と広島県勢の対戦は、77年の第59回大会1回戦で佐賀商−広島商が対戦して以来30年ぶり。この時は4−0で広島商が勝利

★久保、29回2/3連続無失点

 先発の馬場を八回からリリーフした久保が、2回をピシャリと0点に抑えた。これで今大会、連続無失点を29回2/3とした。馬場からの必勝リレーが確立しているが、「点を取られてないのは考えないようにしている。1日長く野球ができて楽しい」。背番号「1」は白い歯を見せた。

名言&迷言・夏

◆身長1メートル63と小柄ながら、先発して7回を散発の3安打に抑えた佐賀北・馬場

「いつもと変わらず投げられた。幼いころは、(体と同様)気も小さくて人前に立つのも緊張したんですけど…」

OBがエール

◆初の決勝進出に佐賀北OBの巨人・岸川二軍打撃コーチ

「ここまで強豪相手に勝ち続けてきたので、最後は自分たちの力を信じて、悔いの残らない戦いをしてもらいたい」

★長崎日大・連投エース浦口キレ無し3失点

 エースの浦口は7回途中3失点で降板。2日連投のため序盤からまったく腕が振れなかっただけに、「スライダーを見逃されて、苦しかった。コントロールが悪かった」と目は真っ赤だった。ベスト4進出の立役者となった左腕は「決勝に進めなかったのは残念だけど、胸を張って長崎に帰りたい」と声を振り絞った。

◆99年のセンバツで沖縄尚学を率いて優勝した長崎日大・金城監督

「完敗です。でも持っている力以上のものを出して、ベスト4まで来られた。選手をほめてあげたい」

◆5安打無得点に抑えられた佐賀北の馬場について長崎日大・柴田

「低めに丁寧に投げていた。ランナーが出てから、あと一本が出なかった」

★特待生問題と無関係の2校が決勝

 今年の高校野球は西武裏金問題に端を発した特待生問題で揺れたが、決勝は特待生がいないチーム同士の対戦となった。佐賀北は市内でも屈指の公立進学校で、特待生とは無縁の存在。広陵も今年4月の日本高野連の調査に対し、特待生制度を採用していないと回答。同月の広島県春季大会に優勝し、6月上旬の中国大会も制した。