2007年08月16日 更新

2007年 第89回全国高校野球選手権大会

最速155キロ残し…仙台育英の剛腕・佐藤由、散る

まさかの敗戦に佐藤由は泣き崩れた(撮影・伊藤奈々)

まさかの敗戦に佐藤由は泣き崩れた(撮影・伊藤奈々)

四回に投じたストレートは球場表示で155キロをマークした

四回に投じたストレートは球場表示で155キロをマークした

 (第89回全国高校野球選手権大会、第8日、2回戦、仙台育英2−5智弁学園、15日、甲子園)“みちのくの快腕”が甲子園を去った。仙台育英(宮城)は佐藤由規投手(3年)が球場表示で歴代最速の155キロをマークしたが、智弁学園(奈良)に2−5で敗れ2回戦で姿を消した。

 大会屈指の剛腕・佐藤由が、涙を流しながら“魔の五回”を振り返った。

 「気持ちに力みがありました。体が前に突っ込んでバランスを崩してしまいました…」

 甲子園が5万観衆の歓声とため息に包まれた。五回一死満塁、1番の佐藤に右越え2点適時二塁打を浴びる。この回、四球をきっかけに甘い球を痛打される悪循環。結局、5安打3四死球で一挙に5点を失った。まさに突然の乱調だった。

 一方で“みちのくの快腕”は、たしかな足跡も残した。四回、稲森にカウント2−1から投じた5球目のストレート(ボール)は、球場のスピードガンで155キロを計測。1回戦の智弁和歌山(和歌山)戦でマークした夏の甲子園最速タイの154キロを上回る新記録だ。

 実はこの1球、バックネット裏の横浜・宮本西日本担当チーフスカウトのスピードガンは、驚がくの156キロを計測していた。

 150キロ台の快速球を153球中16球投げた。自己最速を記録し、高校野球生活を終えた佐藤由は「苦しいことも楽しいこともありました。最後まで全力を尽くして、楽しくプレーできました。悔いはありません」と大粒の涙。3季連続の甲子園で東北勢初の優勝を逃した悔しさは、さらに上のレベルで活躍することで晴らす。

 「世間を驚かせるようなピッチャーになりたいです」。MAX156キロ右腕は今年の高校生ドラフト注目の逸材だ。最後の甲子園は2回戦敗退となったが、剛腕高校生の短い夏は終わっても、その速球にはまだ先がある。

(山口泰弘)

◆楽天・野村監督

 「投球は見られなかったけど、5点も取られるとはね。155キロ? 高校生でそれだけ投げられれば何億稼げるか…。ドラフトで獲りにいく? そりゃいくやろ。あとはクジ運。中田(大阪桐蔭)よりもこっちが競合するんじゃない?」

◆楽天・田中

 「試合はテレビで見ていました。155キロはヤバイッすよ。直球だけじゃなく変化球もいいし、完成度の高い投手だと思う。(楽天で)いっしょにやれたらうれしいし、刺激にもなります」

★仙台育英の大応援団率いた鈴木勝教頭

 宮城・仙台育英の大応援団を仕切るのは、団長の鈴木勝教頭(67)=写真右。甲子園出場が決まると、真っ先に応援態勢を整え、抽選日を待った。初戦の日程が決まると、生徒から応援希望者を募りバスや宿を手配。「休む間なんてありませんよ」。67歳ながら、生徒350人とともにバスで18時間かけてやってきた。

 大応援団を率いて8度目の甲子園。野球をゆっくり見たことなんてない。生徒第一主義で野球部員には応援を指示。応援の生徒には熱中症対策でペットボトルを1000本以上を配って回る。

 しかし、仙台育英は2回戦敗退…。「学校行事で来ているので、これから1泊して送り盆の大文字の送り火を見せて帰りますよ」。団長がゆっくりできるのはもう少し先になりそうだ。

★智弁学園・稲森「速く感じなかった」

 五回に仙台育英・佐藤由から5点を奪った。一死満塁で智弁学園・佐藤が145キロの直球を右越えに2点適時二塁打。智弁学園・稲森も中前打で続いた。「打席ではそこまで速く感じなかった。(智弁)和歌山に勝ったチームを倒せてうれしい」と稲森。一昨年亡くなった上村前監督が率い、小坂監督が4番で主将だった12年前の夏。福留(現中日)を擁するPL学園を準々決勝で破った試合を思いださせる強豪撃破。「上村先生に1勝でも多く勝利をプレゼントしたい」と小坂監督は声を上ずらせた。

【名言&迷言・夏】

◆仙台育英・佐藤由の155キロを体感した智弁学園・稲森

 「体の小さな(1メートル68、63キロ)1年生相手にそんなにムキになるなよ、と思いました」

★今大会初の5万観衆

 第2試合の仙台育英−智弁学園の観衆が今大会初めて満員の5万人と発表された。この日はファンの出足もよく、第1試合の近江−今治西も4万人が詰め掛けた。第2試合で大会屈指の右腕、仙台育英の佐藤由が登場することなどもあり、午前9時40分には満員通知が出された。選手権大会での5万人は昨年決勝の早実−駒大苫小牧の再試合以来。