2007年03月29日 更新

2007年 第79回選抜高校野球大会

清原&ゴジラに並んだ!大阪桐蔭・中田が2打席連発

さすが怪物。これぞ怪物。中田が2打席連続の本塁打を放った=撮影・伊藤奈々

さすが怪物。これぞ怪物。中田が2打席連続の本塁打を放った=撮影・伊藤奈々

 (第79回選抜高校野球大会、第6日、2回戦、大阪桐蔭11−8佐野日大、28日、甲子園)大阪桐蔭・中田翔投手(3年)が佐野日大(栃木)戦で、驚がくの2打席連続本塁打。星稜・松井秀喜(現ヤンキース)以来、センバツ10人目の連弾を放った。これで、PL学園2年時に記録している清原(現オリックス)ら“怪物”の仲間入り。高校通算74号で8強進出を決め、さらに進撃を続ける。

 高々と上がる放物線。火の出るようなライナー。ともに引力に逆らい伸びていく。“怪物”中田だけに許された2度のウイニングラン。平日では6年ぶりに4万を超えたセンバツの観衆が、揺れに揺れた。

 「逆風だったんでどうかなとも思ったけど、いい場面で打てたと思います。大勢の人がいる前で、勝負強さを見せられました」

 持ち前のスター性が、能力を覚醒させた。最初の衝撃は三回一死一、二塁、内角低め直球に反応し、左足を引いて強振。今大会の初安打を左翼席への3ランにした。

 続く四回無死一塁では、真ん中の直球を豪快に左中間席へ。2打席連続本塁打は、センバツでは92年星稜・松井以来。84年PL・清原も記録している“怪物列伝”に名を連ね、会心の笑顔を見せた。「すごい打者に並んだことがうれしいです」。今大会から低反発の“飛ばないボール”が使用されているが「シンでとらえたら同じ」。まったく問題にしていない。

 ついに出始めた怪物の本領。それを支えているのは、幼いころからの努力で作り上げた屈強な体だ。「とにかく、冷蔵庫のものを食べ尽くしていました。小学校のころは体重が60キロ近くあったけど、中学生では身長の方に(成長が)いきましたね」。母・香織さんは、息子の食べっぷりを鮮明に覚えている。友達がお茶わん1杯なら、必ず3杯。好物のカレーも、やっぱり3杯。その後でラーメンやチャーハンを自分で作って、さらにたいらげていた。唯一、牛乳は苦手だったが、鼻をつまんで飲み込んだ。

 体格だけではない。全国レベルの大阪桐蔭高卓球部を訪れ、ときおり“道場破り”。豪快なスマッシュで、卓球部員と互角の戦いを繰り広げている。俊敏性、動体視力でも抜群の才能を併せ持つからこそ、この日のような打撃ができるのだ。

 「本塁打はともかく、強い打球を打つ自信はあります。途中で負けられないですからね。優勝だけを狙います」。目を覚ました中田が見据える次戦は準々決勝。31日、常葉学園菊川(静岡)の“17奪三振男”田中と対戦する。決勝まで残り3試合。1大会最多本塁打3本(清原、松井ら過去8人)に王手をかけた中田が、いよいよ怪物の頂点に立つ。

(阿部祐亮)

◆中田に2本塁打を喫した佐野日大・出井

 「球場全体の視線を一人で集めていて、雰囲気があった。すごい打者だった。(1本目は)自信のある球で、レフトフライになると思っていた。あれを持っていかれて頭が真っ白になった」

★息子が祝福される姿に感激

 中田の母・香織さんはアルプス席で観戦。なによりもチームの勝利を喜んだ。「(今大会は)ホームランが出なくても、チームプレーができているのがうれしい。小学生のときはワンマンだったので…」。豪快な2発よりも、息子がチームメートに祝福される姿に心を動かされていた。

■データBox

 大阪桐蔭の中田翔(3年)が2回戦の佐野日大戦で2打席連続本塁打と1試合2本塁打の2つの大会タイ記録をマーク。2打席連続は64回大会の松井秀喜(星稜)以来10人目。1試合2本塁打は76回大会の中村桂司(大阪桐蔭)以来16人目。過去には清原和博(PL学園)元木大介(上宮)らも記録している=下表

センバツ・2打席連続本塁打
年度大会選手校名回戦相手
197951阿部慶二PL学園宇都宮商
  8254森田範三中京1、2桜宮、大成
  8456清原和博PL学園京都西
  8557宮内仁一池田駒大岩見沢
  8961元木大介上宮市柏
  9062高木浩之亨栄福井商
  9163長沼史朗春日部共栄尽誠学園
林孝哉箕島大阪桐蔭
  9264松井秀喜星稜宮古
200779中田翔大阪桐蔭佐野日大
【注】中京は現中京大中京、京都西は現京都外大西。
森田は桜宮戦の第4打席と大成戦の第1打席

★清原の場合

 84年3月31日、PL学園(大阪)2年の清原(現オリックス)は、2回戦で京都西(京都)と対戦。7−1で迎えた六回に京都西の3番手・関投手から左越えソロを放つと、八回にも同投手からバックスクリーン右に2打席連続となる2ラン。試合も10−1と快勝し、チームは準々決勝に進出した。

◆オリックス・清原

 「2本ともすごいホームランやったね。プロの中でもあの飛距離はそう出せない。一緒に飛ばし合いっこしたいね。期待された場面で打てることがすごいし、スター性もあると思う。とにかくすごいホームランやった」

★松井の場合

 92年3月27日、星稜(石川)3年の松井(現ヤンキース)は、この大会からラッキーゾーンが撤去された甲子園球場で“第1号”。開幕戦で宮古(岩手)の元田投手から、三回にバックスクリーン右へ先制3ランをたたき込んだ。さらに五回にも同投手から右中間席へ3ラン。試合も9−3と快勝し、チームは2回戦に進出した。

◆ヤンキース・松井秀

 「甲子園のスターが出現するというのは、日本の球界にとって、一番いいことだと思います」

■中田が狙う記録

 ▼連続試合本塁打(3試合) 73回大会で東福岡・下野輝章が記録。準々決勝、準決勝、決勝と4戦連発で新記録を狙う
 ▼甲子園最多本塁打(13本) PL学園の清原和博が通算13本塁打(春4、夏9)を放っている。2位はPL学園・桑田と上宮・元木大介の6本塁打。中田は、現在4本塁打で今大会中の単独2位浮上も射程圏
 ▼高校通算本塁打(86本) 埼玉栄・大島裕行が記録。中田は現在74本で、夏までの記録更新はもちろん、100号突破も期待されている

高校通算70本塁打以上の主な選手
選手校名
86大島裕行埼玉栄
83鈴木健浦和学院
中村剛也大阪桐蔭
75森章剛藤蔭
74伊奈龍哉近江
中田翔大阪桐蔭
71大野貴洋所沢商
70城島健司別府大付
平田良介大阪桐蔭
【注】28日現在。別府大付は現明豊

★王監督もチェック「争奪戦になるな」

 ソフトバンク・王監督もヤフードームの監督室で中田の連発をチェック。「すごかったね。(2発目は)左中間にライナーでしょ。ドラフトがどうなるかわからないけど、争奪戦になるな」と気を引き締めた。1月4日、大阪桐蔭の練習始動日に永山チーフスカウト、若井スカウトを派遣した王ホークス。GMを兼任する王監督の鼻息は荒い。

◆楽天・野村監督

 「2本目のアーチは体をうまく回転させていて、木製バットでも入っていただろう。体格はすでにプロ並みで、まだまだ太りそうだな」


◆巨人・原辰徳監督

 「2本も打ったね。すごい。剛と柔を兼ね合わせている感じがする」


◆ヤクルト・古田兼任監督

 「テレビで見ていたけど、特に2本目のホームランはすごかったね。体もデカイけど、あんな高校生はいないでしょう」

★3番手・那賀が好リリーフ

 大阪桐蔭は先発の石田が二回で降板し、2番手の福島も7失点と崩れた。だが、七回から登板した那賀がチームの救世主に。西谷監督は「最後は那賀と決めていた。彼は精神的に強い。いつも厳しい場面で好投してくれる」と目を細めた。1回戦で無安打だった4番の中田が2本塁打5打点と復調。同監督は「1回戦でふがいない結果に終わり、打撃練習をずっとしてきた。その努力の証しだと思う」と満足げだった。

★夏へ手応え!水原が中田封じ

 大阪桐蔭の中田に2打席連続本塁打を浴び、打ち負けた。佐野日大・松本監督は「体格もリーチもある。パワーが違った。(投手は)投げる球がなさそうだった」と今大会屈指の強打者の実力を思い知った様子。それでも2番手水原が五、八回と中田を中飛に抑えた。同監督は「水原が安定したピッチングをしてくれた。自信を持って帰れる」と晴れ晴れとした表情だった。

【名言迷言・春】

◆ブラジル人留学生の佐野日大・ヴィアナは中田の2本塁打にも強気に

 「中田のホームラン? たいしたことないよ。アメリカやキューバには、あれぐらい打つのはいっぱいいる」