2006年08月20日 更新

2006年 第88回全国高校野球選手権大会

“怪物”田中は10奪K!駒大苫小牧が夏3連覇へ王手

田中

田中は10Kの好リリーフ。V3が目前に迫り、苦しんでいた怪物が昨年までの姿に戻った

(第88回全国高校野球選手権大会、第14日、準決勝、智弁和歌山4−7駒大苫小牧、19日、甲子園)V3は目前だ。駒大苫小牧(南北海道)は打線がつながり、智弁和歌山(和歌山)を7−4で下した。エース・田中将大投手(3年)は二回途中から登板し、4安打1失点。これまでコントロールの定まらなかったスライダーを駆使し、10奪三振。1931−33年中京商以来73年ぶりという夏3連覇の偉業をかけて、20日午後1時、早実(西東京)と対戦する。

試合ができなかった悔しさ、そして数々のピンチを乗り越え、最後の扉までたどり着いた。3連覇まであと1つ。勝利をもぎとったのは二回途中から登板し、10三振を奪った“北の怪物”田中だ。

「この夏、1番のデキでした。相手に向かっていく気持ちで投げ抜くことができました」

試合に勝っても納得していなかったエースにようやく笑顔が戻った。

2番手・岡田雅寛投手(3年)が二回に2点を奪われ、4−3と1点差に迫られなお無死一、二塁。そこがエースの出番だった。このピンチを絶妙な一塁けん制で切り抜ける。以後、高速スライダーを駆使し、4本塁打の3番・広井からは2三振。強打の智弁和歌山を完全に封じ込めた。

エースにとって悔しい先発回避だった。前夜、田中と先発・菊地翔太(2年)の2人が監督に呼ばれて通達された。「はい、わかりました」と一言だけ返事をした。理由は分かっていたが、その表情には悔しさがにじみ出ていた。

フォームを崩し納得のいかない投球が続いた田中が追い求めたのは昨夏、3者三振で締めた決勝の京都外大西戦だった。ビデオは擦り切れるほど見た。画面の中の自分は、1球を投げるごと「ウリャー」の雄たけびをあげ、ただガムシャラに投げていた。左肩が当時より開いていることも分かった。甲子園に来てからも、ビデオで見たファームを思い出し試行錯誤を繰り返した。

そして「この夏1番のデキ」と評価したこの日の自己採点は「90点です」。決勝戦を前にようやく、昨年の自分に戻すことができた。

決勝でぶつかる早実は昨秋の明治神宮大会準決勝で対戦。四回一死から登板し、17個のアウトのうち、13個を三振で奪った相手だ。

「あす(20日)はうちの投手陣、全員で勝てればいいです」とチーム全員での勝利を強調したが、もちろん気持ちの中では先発して、最後まで投げ切ると決めている。

中京商が31−33年に達成した夏3連覇まであと1勝。73年の時を超えて、自信を取り戻したエースが偉業へと導く。

(櫻木理)

★本間篤が大暴れ!

主将の4番・本間篤が大暴れ。1点を先制された一回二死三塁で適時右越え三塁打を打つと、五回、七回の打席でも連続2塁打を放った。3長打1打点の活躍に主将は「これまでチャンスであまり打てなかったので、よかった」とホッとした表情。20日の決勝に向けては「早実は(勝利した)神宮大会よりもはるかにレベルアップしている。こわい相手です」と気を引き締めた。

◆3安打の駒大苫小牧・三谷

「自分は安打が多いし、チャンスをつくれていると思う」

【駒大苫小牧V3への軌跡】

2004年・夏】 決勝はセンバツの覇者・済美(愛媛)と対戦。先発・岩田が崩れ、二回終わって1−5と苦しい展開だったが、四回に3点を奪って逆転。六回に6−9と再逆転を許すが、その裏同点に追いつき済美の先発・福井をノックアウト。七回に佐々木孝、桑島、鈴木の3連続適時打で3点を奪い勝ち越しに成功。九回二死一、三塁で済美の4番・鵜久森(日本ハム)を遊飛に抑え、13−10で乱打戦を制し、深紅の大優勝旗を初めて北海道に持ち帰った。
  【2005年・夏VTR】 決勝の相手は京都外大西(京都)。先制を許すも一回裏に追いつき、少ないチャンスを確実に点に結びつけ六回を終わり3−1とリード。五回途中から先発・松橋に代わり、リリーフした2年生(当時)右腕・田中が七回に追いつかれるも、その裏に辻の二塁ゴロ、岡山の遊撃内野安打で2点を追加し、最後は田中が自己最速150キロをマークした直球で終幕し、5−3で勝利。57年ぶり、史上6校目の夏連覇を達成した。

★応援も全国レベル!

3連覇に向けて、三塁側の駒大苫小牧応援団もヒートアップした。特に目立ったのは「マーチングバンド全国大会」に3年連続出場中のブラスバンド部。106人いる部員は土日の練習で朝8時から夜8時までウエートトレやストレッチを交え、野球部に負けないような猛練習を積んでいる。18日に合流したブラスバンド部・屋敷紀志コーチ(41)は「北海道では駒大苫小牧の話題でもちきりです。あした(20日)は全校応援になるのでぜひ、優勝してもらいたい」とエールを送った。

■データBox

(1)北海道と和歌山の対決は第84回大会での札幌一−智弁和歌山以来、10度目。これまではいずれも和歌山が勝利をつかんでいたが、駒大苫小牧が初めて白星をもたらし、対和歌山の連敗を9で止めた。春のセンバツではこれまで7度対戦し、北海道が4勝3敗とリードしている。
  (2)前年に2連覇を達成したチームが決勝に進むのは、1923年の和歌山中(和歌山)、33年の中京商(愛知)に続いて3校目。決勝で北海道勢と東京勢が顔を合わせるのは、春夏通じて初めて。夏の甲子園では過去4度の対戦があり、2勝2敗だ。東京勢の決勝進出は01年に優勝した日大三以来、9度目。決勝では過去5勝3敗で、早実は25年と80年と2度敗れている。

高嶋監督

完敗に泣き崩れる智弁和歌山の選手たち。甲子園51勝の名将・高嶋監督(右端)でも駒大苫小牧は止められなかった

★高嶋監督、田中に脱帽

智弁和歌山打線は、駒大苫小牧・田中に対しては当てただけのゴロ、ハーフスイングの空振り三振がほとんど。「攻略の糸口がなかった。(スライダーに)意識過剰になっていた。一枚上手」と高嶋監督は完敗を認めた。準々決勝までの計8アーチは大会記録の11本塁打で優勝した00年夏と同じペース。しかし、今大会4本塁打を放っていた広井が3三振するなど一発を封じられた。広井は「全然駄目だった。スライダーと真っすぐの見極めが全くできなかった」と肩を落とした。

◆田中から1打点も攻略しきれなかった智弁和歌山・橋本

「歯が立たなかったの一言に尽きる。自分の力がなかった」