2006年08月20日 更新

2006年 第88回全国高校野球選手権大会

早実・斎藤13奪Kで完封!駒苫・田中と真っ向勝負だ!

斎藤

投げるたびにたくましくなる鉄腕・斎藤がついにチームを決勝まで導いた

(第88回全国高校野球選手権大会、第14日、準決勝、鹿児島工0−5早実、19日、甲子園)深紅の大優勝旗に王手をかけた。早実(西東京)が鹿児島工(鹿児島)を5−0で下し、荒木大輔(現西武投手コーチ)を擁した1980年以来、26年ぶりの決勝進出。一回に後藤貴司主将(3年)の3ランで先制し、エース・斎藤佑樹投手(3年)が3安打13奪三振で今大会初完封。20日、野球部創部102年目で初の夏制覇を目指し、3連覇を狙う駒大苫小牧(南北海道)と激突する。

最後の打者を13個目の三振で締めた斎藤は右手で控えめにガッツポーズを作った。王先輩も荒木先輩も達成できなかった夏の日本一へあと1つ。ハデなポーズはもちろん、きょうの決勝で駒大苫小牧を破ってからだ。

「序盤に後藤が本塁打を打ってくれたので楽に投げられました。相手打線に負けないように攻め続けました」。この夏の甲子園で初の完封劇も特別な喜びはない。それより勝ったことが何より。端正なルックスで人気急上昇中のエースのお立ち台での受け答えは、すでに貫禄すら漂っていた。

早実

早実初の夏の頂点を目指し、駒大苫小牧打線相手に挑む=撮影・吉澤良太

一回一死一、二塁で後藤が右中間席へ先制3ランを放つなど序盤で4点のリードをもらった。ここまで防御率1.25の右腕にはこれで十分。鹿児島工打線を散発3安打に封じ、甲子園では今春センバツ1回戦(対北海道栄)以来の完封。防御率は1.00まで下がった。

「あの頃はセンバツに出たことでうぬぼれが出た」

和泉実監督(44)が苦しかった時期を振り返る。センバツ8強で、春季都大会では優勝候補の本命とされたが、準決勝敗退。選手はすっかり自信を失い、西東京大会直前まで練習試合では1勝10敗3分と負けが込んだ。夏を目指す意欲が見られないレギュラーに、サポート役の控え組から「練習を手伝いたくない」という声があがる。チームが崩れ始めた。インターネットなどでは低迷するチームを中傷する書き込みもあった。

そんなチームを和泉監督は叱った。

「そんなことに惑わされるなんて、悔しいじゃないか」

主将の後藤はそれまでなかった練習後のミーティングを設け、3年生26人それぞれに正直な気持ちをぶつけさせた。斎藤も「もう1度甲子園のマウンドに立ちたい」と素直な思いを明かした。少しずつチームが戻っていった。

「野手陣で斎藤を楽にしてあげようと思っていました。1本は(本塁打を)打ちたかった」と後藤。先制アーチは、早実魂が結晶した証しだ。

駒大苫小牧には昨秋の明治神宮大会準決勝で3−5で逆転負け。だが5試合で652球を投げた鉄腕・斎藤には怪物に投げ勝つ自信がある。

「今の田中は去年見た好調の田中ではない。3連覇を止めるのは自分たちしかいません。あと1回勝って旗を持って帰ります」

26年ぶりの決勝戦。選手の思いは創部102年にして初めての夏の頂点で一致している。この夏1番の大観衆が訪れるであろう聖地で、早稲田伝統のエンジのスクールカラーと深紅の大優勝旗が重なる。

(吉村大佑)

★その時

早実の応援団が陣取る三塁側アルプス席にはエース・斎藤の両親と、東京・小平市内で斎藤と二人暮らしを送る大学生の兄、聡仁さん(21)も熱い声援を送った。12日から兵庫・尼崎市内のホテルに宿泊中の父・寿孝さん(57)は「心配なのは疲労だけです。(18日の準々決勝の日大山形戦後に)携帯で“ナイスピッチング”とメールを送ったら、“まぁね”とだけ返信がありました。決勝では今までやってきたことを出してほしい」と優勝を願っていた。

【1980年夏・VTR】

準決勝まで44回無失点だった1年生エース・荒木大(現西武コーチ)を擁する早実が、愛甲(元ロッテ)率いる横浜と対戦。早実が一回に1点を先制したが、その裏、横浜が3連打と荒木大のボークなどで2点を奪い逆転。二、三回にも加点し、5−1とリードした。だが早実打線が横浜の先発・愛甲を攻略し、五回には1点差まで迫ったが、リリーフした川戸に抑えられた。横浜が6−4で勝利し、夏の大会初優勝を遂げた。

◆西武・荒木大輔投手コーチ

「斎藤くんは連投で体力的に厳しいかなとみていたけど、腕がよく振れていて、終盤でも140キロ台を投げていた。決勝戦の雰囲気は甲子園でも特別。手ごわい相手だけど、最後の力を振り絞ってほしい」

■春は王先輩が優勝

早実は過去に夏の甲子園で2度決勝に進出し、1925年は高松商に3−5、80年は横浜に4−6と敗れている。ちなみに57年のセンバツでは、ソフトバンク・王貞治監督が2年生エースとして出場し、高知商に5−3で勝利して優勝している。

◆都内の病院でテレビ観戦した早実OBのソフトバンク・王監督

「投の斎藤、打の後藤。投打の両輪がチームをよく引っ張ってくれた。泣いても笑ってもあと1試合。怖いものなし! 思い切って早実野球を見せてください」

★小柳が連日の活躍!

2番・小柳が連日の活躍だ。準々決勝(対日大山形)で決勝打を放ち、この日も3点リードの二回二死二塁から左中間を破る適時二塁打。「守っている時間が短いので、うまく打撃につなげられました」と斎藤の好投に感謝した。昨秋の明治神宮大会の準決勝で駒大苫小牧に敗れたが、田中から左中間二塁打を放っており「一度対戦しているので、対策がたてやすい。同じ相手に2回は負けられません」と雪辱を誓った。

★4強に胸張る榎下

鹿児島工のエース・榎下は「ベスト4を誇りに思いたい。悔いは全然ない。全部出し切れた」と晴れやかな表情だった。前日に10回、175球で完投した疲れを考慮して先発を回避し、登板は五回途中から。八回に1失点し、力投は報われなかったが「今までで一番思い出深い試合。最高の試合ができた」と胸を張っていた。

◆敗戦にも涙を見せなかった鹿児島工・中迫監督

「選手が泣いてないのに、泣くわけにはいかない。最後までよく自分たちの野球をやってくれた」


◆六回に代打で三振した鹿児島工のラッキーボーイ・今吉晃

「今まで生きてきた中で最高に楽しかった。やっと帰れるぐらいの気持ち」