2006年08月19日 更新

2006年 第88回全国高校野球選手権大会

早実初Vまであと2つ!斎藤が熱投144球10奪K

斎藤

先輩・荒木に負けない甲子園のニューアイドル。斎藤は5安打2失点の力投で早実を26年ぶりの4強に導いた=撮影・高井良治

(第88回全国高校野球選手権大会、第13日、準々決勝、日大山形2−5早実、18日、甲子園)“幸福の青いハンカチ”で勝った−。早実(西東京)が日大山形(山形)に5−2で逆転勝ちし、1年生エース・荒木大輔(現西武投手コーチ)を擁して準優勝した1980年以来、26年ぶり5度目の準決勝進出を決めた。早実は1点を追う八回、2番・小柳竜巳内野手(3年)の2点適時打などで4点を奪い逆転。エース・斎藤佑樹投手(3年)は青いハンカチで汗をふきながら、5安打2失点の好投をみせた。初の深紅の大優勝旗まであと2勝だ。

斎藤

斎藤はマウンドで青いタオルハンカチを取り出し、顔の汗をぬぐった=撮影・吉澤良太

ヒーローは一塁塁上で両手をグッと握りしめた。その手で26年ぶりにベスト4の扉をこじ開けた。

1点を追う八回一死満塁。2番・小柳の痛烈な打球が前進守備の遊撃手を襲う。ボールが外野に転々とする間に2者生還。逆転に成功した。

「空を見て、心を落ち着かせてから打席に入りました。斎藤の頑張りに応えようと必死でした」。小柳は早口でまくしたてた。

22日、小柳の誕生日に兄・大輔さん(26)が入籍する。実はお付き合いする前の婚約者と大輔さんが今春のセンバツを観戦。そこから交際に発展した。そんな流れもあって、入籍日を小柳の誕生日にした。しかも、大輔さんは早実の大先輩、あの荒木大輔の活躍で名付けられたという。

主軸が続いた。二死一、二塁から4番・後藤貴司主将(3年)が中前に、5番・船橋悠外野手(3年)が左前へ連続適時打。この回4点。斎藤に3点のリードは十分だった。

「うれしい。きょう勝たないと、春(準々決勝敗退)のリベンジはできないと思っていましたから」

試合中、斎藤は何度もポケットから青いタオルハンカチを取り出し、顔の汗をぬぐった。女子高生からのプレゼントではない。自宅から持ってきた。「袖より(汗を)よくふけるから」と斎藤。主将の後藤もタオルハンカチを使用している。「注目度もあるし、身だしなみにも気をつけているのでは」と佐々木部長。プレーしやすさと身だしなみ。これもまた、時代の流れだ。

センバツから使っている“青いハンカチ”はエースに勝利という幸福を運んでくる。五回に逆転を許したが、終わってみれば5安打2失点で3試合連続完投。144球、10奪三振の“熱投甲子園”だった。

19日の準決勝の相手は鹿児島工。「決勝を目指して精いっぱい戦いたい」と斎藤。「優勝して早実の新しい歴史をつくりたいんです」と小柳。王先輩も荒木先輩も成し得なかった夏の全国制覇。深紅の大優勝旗まであと2勝だ。“幸福のハンカチ”で新たな歴史の扉を開く。

(吉村大佑)

【斎藤佑樹アラカルト】

▼生まれ 1988(昭和63)年6月6日、群馬県太田市生まれ。18歳
  ▼球歴 小1から「生品リトルチャンピオンズ」で野球を始め、投手一筋。生品中では3年時に関東大会8強。早実では1年夏からベンチ入りし、2年夏からエース。右投げ右打ち
  ▼サイズ 1メートル76、70キロ
  ▼家族 両親と兄、祖父母
  ▼球種 直球(MAX149キロ)、カーブ、スライダー、フォーク
  ▼好きなプロ野球選手 ロッテ・黒木
  ▼ニックネーム さいちゃん
  ▼勉強 好きな教科は現代文、苦手な教科は古典。中学時代の平均評定は4.4(5段階)
  ▼特技 料理。得意メニューは野菜いため、チャーハン

◆早実・和泉監督

「(日大山形の先発が阿部ではなく青木で)どんな球を投げるのか分からず、浮足立った。ほっとした感じでいっぱい。選手がよくやってくれている。ここまでくれば総力戦、あきらめないで集中してやりたい」

■データBox

早実が日大山形に勝ち準決勝進出。同校の夏の4強は15、25、35、80年に次いで26年ぶり5度目となる。過去4度は25、80年が決勝進出(ともに準優勝)、15、35年が4強止まり。準決勝での成績は2勝2敗の五分となっている。

★後藤が貴重な追加点

主将が名誉挽回のひと振りだ。八回逆転に成功した後の二死一、二塁から後藤が中前適時打。貴重な追加点をたたき出した。七回無死一塁で犠打を失敗していただけに「取り返そうと思ってた。大阪桐蔭の謝敷君からもらったお守りを握って、絶対打てると念じていた」と笑顔。それでも「優勝を意識しないで、初戦のつもりで臨みたい」と準決勝に向けて気合を入れ直した。

★荒木先輩からエール

八回裏に逆転するとは、本当に頼もしい後輩ですね。5番の船橋くんはこの日もいいスイングをしていたし、斎藤くんも疲れで真っすぐが思うように走らないところで、切れのあるスライダーを使ってしのいでいました。

私もかつて甲子園の連投で肩、腰の張りに苦しみました。今が一番苦しいとき。中1日でも休みがあれば全然違うんでしょうけど…。準決勝、そして決勝と斎藤くんには最後の力と気力を振り絞って、がんばってほしいと願っています。

(現西武投手コーチ)

★王監督「この勢いで頑張って」

胃がんの手術を受け、都内の病院に再入院しているソフトバンク・王貞治監督(66)は、後輩の快進撃に目を細めた。「緊張感のある、いい試合でした。八回の集中打、つなぎの打撃は見事。早実の伝統でもありますが、選手が気持ちをひとつにして戦う姿は、先輩としてもうれしい限り。斎藤投手も中1日でよく投げましたね。この勢いで頑張ってください」とコメント。夕方には6日の再入院以来初めて病院を出て、二女・理恵さんらと近隣を約1時間の散歩。「疲れたけど、外の空気はいいね」と満足そうに話していたという。

★青木“奮投”及ばず

本格的な投球練習を始めたのは4月からという日大山形の青木が七回まで1失点。しかし、八回に打ち込まれ逆転を許した。「くやしいですが、悔いの残らないように思いっきり投げました」。3試合を投げ抜いたエース・阿部がこの日は先発回避。代役を務めたが最後は力尽きた。「夢の舞台でプレーすることができてよかった。胸を張って山形に帰ります」。打っても2安打の青木。山形県勢初のベスト8という足跡を残し、甲子園を去った。

★秋場「あと一歩でした」

日大山形の7番・秋場が1−1の六回二死三塁で一時は勝ち越し打となる左前適時打。女房役としても甲子園初登板・青木のスライダーを生かし、早実を苦しめた。3回戦(対今治西)でサヨナラ犠飛を放ち、ベスト8入りに貢献した秋場は「あと一歩でした。でも全国の強豪と互角に戦うことができました」と、満足していた。