駒大苫小牧サヨナラ8強!田中が歓喜のホームイン!

砂けむりが舞う歓喜の場所。逆転サヨナラ勝ちに駒大苫小牧ナインは田中(手前右から2人目)に駆け寄った。北の王者が奇跡を起こした
(第88回全国高校野球選手権大会、第10日、3回戦、青森山田9−10x駒大苫小牧、15日、甲子園)これが高校野球、これが奇跡だ。3回戦の第1試合で73年ぶりの夏3連覇を狙う駒大苫小牧(南北海道)が、10−9で青森山田(青森)にサヨナラ勝ち。一時は6点をリードされながらも終盤に驚異的な追い上げを見せ、同点の九回に三谷忠央内野手(3年)が左中間にサヨナラ適時打。ベスト8一番乗りを果たした。注目の田中将大投手(3年)は3番手で三回途中から登板し、6回2/3を6安打3失点ながらサヨナラのホームを踏んだ。さあ、大偉業まであと3勝だ。
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「走れ」。乾いた金属音がホーム突入の合図だった。
同点に追いついた九回二死一塁。6番・三谷が左中間へはじき返す。一走の田中が走る。重い足を必死に動かし、本塁へ突っ込んだ。砂けむりに一瞬消えたボールは、捕手のミットからこぼれていた。

“最後”はやはり、この男だった。歓喜の生還。田中が奇跡の雄たけびをあげた=撮影・山田喜貴
サヨナラだ。田中が泥だらけの両手を青空に突き上げる。歓喜のナインが駆け寄った。笑顔。雄たけび。聖地が揺れた。
「三塁コーチャーと打球を見て、抜けると判断しました。点差が開いても一昨年と昨年の優勝を思いだして、やってやると思いました」。田中は、うれしさと驚きにほおを紅潮させた。夢をつないだ。奇跡を起こした。最大6点差をひっくり返す、野球漫画の『ドカベン』にもない? 仰天の結末。北の王者が8強入りを決めた。
“波乱”は試合前からあった。田中が高校生No.1投手とはいえ、決勝戦までを一人で投げきることは難しい。初戦(2回戦、対南陽工)で6四球2暴投と荒れた“怪物”を温存。左腕・岡田雅寛投手(3年)を先発起用したが、2回途中4失点で降板。田中が2番手の菊地をはさんで三回一死一塁でマウンドにあがったときには、4点差がついていた。
八回、一度は3連続長短打で3点差を追いついた。直後の九回、再び致命的とも思える1点を奪われたが…。一死から3番・中沢竜也内野手(3年)が右越えに起死回生の同点弾。二死から田中が中前打で出塁し、三谷の快音で死闘を制した。ヒーロー・三谷は「人生を変えるくらいの大きな経験」と声を弾ませた。
指揮官の期待に応えたかった。初戦突破した10日の夜、宿舎で香田監督が田中の部屋を訪ねた。高校入学後初めて、1対1で約40分間の話し合い。香田監督から「おまえには影響力がある。野手はおまえの背中を見て守っているんだ」とゲキを飛ばされた。「よっしゃ、やってやろうという気持ちになった。(この日は打たれても)バッターに向かっていった」と田中。背中でナインにメッセージを発していた。
公式戦の連勝は46に伸びた。「ひとつのこと(3連覇)に向かってチーム一丸となって戦っていきたい。きょうは厳しいところもつけた。あとは審判(がストライクをとってくれる)だけですね」と田中の“ビッグマウス”も復調。73年ぶり史上2校目の3連覇へあと3勝だ。偉業へのカウントダウンが始まった。
(吉村大佑)
★中沢4安打2打点!
九回に勝ち越されたが、その裏一死から中沢が低めの球にバットをガツンと合わせるだけのような“ハーフスイング”で右翼席へ運ぶ、芸術的な同点ソロ。3点を追う七回の打席でも、二死三塁から左中間を破る適時二塁打を放った。4安打2打点と活躍した3番打者は「(本塁打は)よっしゃ〜!! という気持ちです。ベンチの雰囲気もいけいけどんどんで、初戦の10倍ぐらい盛り上がっていました」と笑顔で振り返った。
■データBox
駒大苫小牧が青森山田にサヨナラ勝ち。四回表終了時で1−7と、最大6点差があったが逆転した。「6点差逆転」は昨夏2回戦、京都外大西(京都)が関西(岡山)戦で、六回裏終了時の4−10から逆転勝ちして以来(最終12−10)。
最大の逆転劇は97年の第79回大会1回戦、市船橋(千葉)が文徳(熊本)戦で三回表終了時の1−9から逆転した「8点差」。最終スコアは17−10だった。
98年の第80回大会準決勝では、松坂(現西武)らを擁する横浜(神奈川)が明徳義塾(高知)戦で八回表終了時の0−6から「6点差」を逆転してサヨナラ勝ち(7−6)。同年、春夏連覇を達成した。
★優勝の陰に逆転勝ちあり
駒大苫小牧は過去2度の夏優勝の中で、いずれも大逆転勝ちの試合があった。04年の決勝(済美戦)の4点差と、05年の準々決勝(鳴門工戦)の5点差をそれぞれひっくり返して優勝につなげている。
■その時
北海道苫小牧市の駒大苫小牧高では、大型スクリーンの前で約500人が観戦。劇的な勝利を収めると互いに抱き合い、感激を分かち合った。「ミラクルが起きると信じていた」。また、札幌駅地下街に設置された巨大スクリーンの前でも、買い物客ら100人以上が祈るように見守った。札幌市の女性会社員(33)は「朝からずっと見ていた。興奮でこの後の仕事が手に付かないかもしれない」と顔を紅潮させた。
★青森山田12安打9得点も…涙、涙
序盤は打線が爆発して最大6点のリードを奪った。駒大苫小牧の先発・岡田、菊地を攻略し、三回途中で引きずり出したエース・田中から3点を奪うなど12安打9得点。それでも勝利の女神は振り向いてくれなかった。3安打2打点の6番・本田は「(田中の登板時は)やっと出てきたなという感じで気持ちも引き締まりましたけど…。サヨナラ負けはやっぱり悔しい」と号泣した。
◆九回の本塁でのクロスプレーについて青森山田・富川
「ホームに投げた瞬間は刺せたと思ったけど…」
◆二回には自ら3ランを放ったが、16安打10失点でサヨナラ負けを喫した青森山田・野田
「相手が上手でした。本塁打は偶然のようなもの。もっと長く甲子園で戦いたかった」









◆岡田の先発について駒大苫小牧・香田監督
「最初に田中を出すと、あとの投手が不安になると思った。(最大)6点差になったのは監督のさい配ミスです」
◆4番で1安打1打点の駒大苫小牧・本間篤主将
「みんなの調子がいいので、楽な気持ちで打席に立てています」