2006年08月11日 更新

2006年 第88回全国高校野球選手権大会

駒大苫小牧3連覇へ発進!ドラ1候補・田中が14奪三振

田中

不調でもMAXは148キロ、14奪三振。プロがホレ込む資質の高さは見せつけた=撮影・伊藤奈々

(第88回全国高校野球選手権大会、第5日、2回戦、南陽工3−5駒大苫小牧、10日、甲子園)今秋のドラフト1巡目候補、駒大苫小牧(南北海道)・田中将大投手(3年)が、南陽工(山口)相手に9回7安打6四球で3失点と苦しみながらも14三振を奪い、5−3で完投勝利を遂げた。1年ぶりの甲子園で、公式戦の連勝を「45」に伸ばし、3回戦進出1番乗り。1933年の中京商(現中京大中京)以来、73年ぶり史上2校目となる3連覇へ向け、発進した。

怪物は悔しさをにじませていた。

「ボール先行でリズムを悪くして、みんなに迷惑をかけてしまいました。周りを見る余裕もなくて、気を使わせてしまった」。今秋ドラフトの超目玉の田中は、165球の投球内容にイラだちを隠せなかった。

田中

コントロールが定まらずスライダーが決まらない。苦しい投球に田中も渋い表情

6四球のうち先頭打者に四球を与えること3度。序盤は制球が定まらなかった。

だが中盤以降は、速球中心からカーブ、チェンジアップでカウントを稼ぐ組み立てに変更。7安打を浴びながら3失点完投。本調子ではなくても自己最速にあと2キロに迫る148キロもマークし、14三振を奪った。

誰の目にも不調は明らか。それでも試合を壊さなかった。ここに甲子園で7試合投げ、5勝0敗、聖地に滅法強い男の秘密が隠されている。

ネット裏で見つめた巨人・大森剛スカウト(39)は「試合中に修正しようとしても、実際にできる高校生はいない。抜きんでている」と目を見張った。

マウンドから打者の狙いや、そして自分の調子を見極め、組み立てを変えていく。高校生離れした冷静さ。その原点は小学生のころにあった。

兵庫・伊丹市生まれ。捕手だった「昆陽里(こやのさと)タイガース」時代は、テレビの中のヤクルト・古田を追いかけた。「観察することが好きだった」と父・博さん(45)がいうように、マスク越しから打者をじっと見つめる古田の姿を見て、マネをするようになった。

昨夏以降、高校生ナンバー1と評価されてきた男は、この1年で精神的にも成長した。新チームでは投手ながら主将に就任。当初は守りのミスで険しい表情を浮かべることも多かったが、12人の副主将にサポートされ、仲間で戦う意識が芽生えた。今大会前に主将の座は本間篤史外野手(3年)に譲ったが、周囲に気を配り、下級生にも声をかける田中を見るのは珍しくない。

「次の試合こそ仲間に迷惑をかけたくない。相手に襲いかかるくらい、全力でぶつかっていきます」。甲子園不敗の男はあえてリベンジの気持ちで3回戦に臨む。史上2校目の3連覇の偉業は、この右腕の快投なくして完結しない。

(吉村大佑)


■田中 将大(たなか・まさひろ)

1988(昭和63)年11月1日、兵庫・伊丹市生まれ、17歳。昆陽里(こやのさと)小1年から野球を始める。松崎中では「宝塚ボーイズ」に所属し投手と捕手。駒大苫小牧高では2年時に春夏連続で甲子園に出場し、夏は優勝。秋の国体、明治神宮大会も制覇した。1メートル85、81キロ、右投げ右打ち。家族は両親と弟。

◆田中の球を受けた駒大苫小牧・小林

「抜けてくる球が多かったし、左肩の開きが早かった。(打者に)スライダーを見られて苦しかった」

【各球団の動き】

高校生ドラフトは9月25日に行われ、1巡目は入札抽選となる。上位指名候補で重複が予想されるのが田中。現時点では地元の日本ハム、楽天、巨人が1巡目で指名する方向で調査を進めている。そのほかでは阪神、中日が堂上、広島が前田、西武が地元埼玉の増渕、ソフトバンクは大嶺、ヤクルト、横浜、ロッテ、オリックスは田中、増渕らを上位リストに入れ、今後の各球団の動きを見極めながら絞り込む。

★本間篤主将は辛勝反省

駒大苫小牧は苦しみながらも初戦を突破した。一回に3番・中沢の中前打で先制。二、三回も相手のミスに乗じて追加点を挙げたが、三回途中から登板した南陽工の村岡を打ちあぐね、七回に1点をとるのがやっとだった。4番の本間篤主将は「(ベンチは)負けているような雰囲気だった。あそこでもう1本が出ていれば…」と5−3の七回二死一、二塁のチャンスでの凡退を反省した。

★橋本議員も大興奮

駒大苫小牧OBでスピードスケートの五輪メダリスト、橋本聖子参院議員(41)が母校の応援に駆けつけた。橋本議員は来月出産予定という大きなおなかを抱えながら、好機にはメガホンをたたいて大興奮。「チャンスはめったにないので、3連覇を狙ってほしい」と73年ぶりの偉業に挑む選手たちにエールを送った。野球好きで現役時代は俊敏さを養うため、練習にノックを取り入れたこともあったという。「日程の都合がつく限りはまた来たい」と熱心だった。

◆一回に先制打、七回には貴重な適時打を放った駒大苫小牧・中沢

「本当にうれしい。思い切って、打つことができた。去年よりも成長できたと思う」

★仲野「勝てた試合」

南陽工のエース・仲野は三回途中で降板。味方の失策や詰まった打球が安打になるなど、不運もあったが「狙い通りに投げても相手に振り切られた。相手が上」と潔く負けを認めた。マウンドを降りた後はチーム初ヒットを含む2安打。「打つ自信はあった。勝てた試合だと思う…」と声を詰まらせた。

◆28年ぶりの夏の甲子園で駒大苫小牧を苦しめた南陽工・山崎監督

「田中君は崩せると思った。やはり悔いが残ります」

★立野が脱臼

南陽工・立野陽政中堅手(3年)が駒大苫小牧戦の五回の守備に入る前に右肩の痛みを訴えて、ベンチ裏で応急処置を受けた。右肩関節前方脱臼の診断で、肩の脱臼を元に戻した。西宮市内の病院でX線検査を受けた結果、骨には異常はなく肩の脱臼も元に戻っていた。山口に戻ってから再検査を受ける予定。