早実13点大勝発進!王さん入院の日に激励の1勝
大舞台に強い。これが伝統の力だ。早実は三回、後藤が生還して早くも4点目。その後も強力打線が爆発した=撮影・早坂洋祐
王監督に届け。エース・斎藤は魂の126球を投げ込んだ=撮影・浜坂達朗
(第88回全国高校野球選手権大会 第1日、早実13−1鶴崎工、6日、甲子園)王先輩、勝ちました!! 49校が参加して“球児の夏”が開幕。第2試合では早実(西東京)が、1996年以来、10年ぶりに夏の甲子園に白星を刻んだ。エース・斎藤佑樹投手(3年)が3安打1失点の熱投、打線も18安打13得点でバックアップ。鶴崎工(大分)に13−1と圧勝した。同校OBのソフトバンク・王貞治監督(66)はこの日、食事指導などのために都内の病院に再入院したが、後輩が一丸となって『白星』という名の良薬を届けた。
◇
王先輩にこの勝利を届けます−。
意識の中でそうつぶやいていた。顔を流れる汗も気にならない。右腕を思い切り振った。九回二死。最後の投球はこの日、一回にもマークした球速145キロのストレートだ。早実のエース・斎藤が灼熱(しゃくねつ)のマウンドで躍動した。
「センバツのときは、ちょうどWBC期間中で王さんの(世界一の)姿に勇気をいただきました。だから今度は、僕らが元気を与える番なんです」
九回に一度、マウンドを2年生の塚田晃平投手に譲った。しかし、無死一、三塁のピンチで再登板。後続を断ち切り、勝利の雄たけびをあげた。夏は1996年以来、10年ぶりの勝利だ。
前日の5日。早実OBで王監督の2学年先輩でもある江口昇コーチ(68)を通じて、偉大な先輩からのメッセージを受け取った。
『(予選では)ねばっこい野球をしてくれた。甲子園では負けん気の強い“早実魂”、最後まであきらめないファイティングスピリットを見せてください』
ナイン全員が胸を熱くした。目を赤くする選手もいた。「王さんの言葉でさらにモチベーションがあがりました」と斎藤。48年の長い時を経てエースナンバーを受け継ぐ男の126球。『力』を『早実魂』を、指先に集中させた。
センバツの反省も生きている。2回戦(関西戦)が再試合となり、2日間で24イニング334球を投げきった。しかし、3連投となった準々決勝(横浜戦)ではメッタ打ちにあい、6失点KO…。
屈辱を胸に走った。脳裏からあの忌まわしい“快音”が消えるまで走り込んだ。それとともに、全体練習の後には20キロの負荷をかけ200回のスクワット。その結果、春までのMAX143キロが6キロもアップした。西東京大会決勝では自己最速の149キロをマーク。身につけた速球とスタミナを武器に、この夏の聖地を戦っていく。
次の相手はセンバツで大敗した横浜を破った大阪桐蔭だ。「最後の大会で今までやってきたことをすべて出したいです」。王先輩の思いを背負ったエースが“早実魂”で強力打線に立ち向かう。
(櫻木理)
■斎藤 佑樹(さいとう・ゆうき)
1988(昭和63)年6月6日、群馬県生まれ、18歳。小学1年で野球を始め、生品中では投手として3年時に関東大会ベスト8。早実では1年夏から背番号18でベンチ入り。2年夏からエースとなった。MAX149キロの直球と鋭く落ちるフォークが武器。1メートル76、70キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、祖父母。
★毎回走者の18安打
エース・斎藤の好投に打線も応えた。毎回走者を出し、18安打13得点。7点リードの八回に4点、九回にも2点を奪い、終盤まで攻撃の手を緩めなかった。先制点をたたき出すなど2安打6打点の3番・桧垣は「センバツのときより、気持ちよく校歌を歌えました」と満面の笑み。4安打3打点の5番・船橋は「打席では無心でした。甲子園が力以上のものを引き出してくれる」と興奮気味だった。
コメント◆斎藤のボールを受けた早実・白川
「(斎藤は)6割の出来。安定感を欠いていた。まだ抜けるボールがある」
◆斎藤の好投に早実・和泉監督
「疲れが心配だったが、自分のペースで落ち着いて投げていた」
★序盤の失策響き…主導権握れず大敗
13点を失う大敗に鶴崎工の仲道監督は「持ち味は出したと思うが、こういう形になって非常に残念」と下を向いた。一回に失策絡みで1点を先制され、主導権を握られた。「みんなでどうにかしなければと思ううちに、やるべきことを見失ってしまった」と焦りばかりが募った。打線も3安打と沈黙。「いい投手で思うように打たせてもらえなかった」と監督の表情もさえなかった。
◆鶴崎工・藤丸
「(3失策は)甲子園の雰囲気に上がってしまった。本当に動けなかった。仲間を信じてベンチから声を出した」









◆病院内でテレビ観戦したソフトバンク・王監督
「平常心で戦うことの大切さ、そして難しさを教えられた試合でした。早実はそつない攻撃と堅守という持ち味を十二分に発揮してくれました。次の対戦相手は今大会屈指のチームだけに、きょうの大勝は忘れて、もう一度初心に帰って頑張ってほしい」