巨人優勝特集

2007年10月03日 更新

先発へのこだわり、エースのプライド捨てV導いた上原の決断

上原嬉し濡れ ビールかけでは守護神が標的に。上原が歓喜のシャワーを浴びた(撮影・塩浦孝明)

上原嬉し濡れ ビールかけでは守護神が標的に。上原が歓喜のシャワーを浴びた(撮影・塩浦孝明)

 (セ・リーグ、巨人5x−4ヤクルト、最終戦、巨人14勝10敗、2日、東京ドーム)歓喜の輪の真ん中に立つはずだった守護神は、少し遅れて興奮のるつぼに飛び込んだ。劇的な結末はブルペンのモニターで。同点なら出陣する延長戦のマウンドに備え、上原は肩を作っていた。

 「ウイニングボールは取れなかったなあ。開幕も出てないし、最初と最後は寂しかったなあ」。とがらせた口の端から、笑みがこぼれた。真ん中で原監督を支えた胴上げの輪が解かれると、仲間が次々に抱きついてきた。1年間の思いとともに眼の奥が熱くなった。

 「連投はできません」−。開幕前、ストッパー転向の打診を一度は断った。ここ2年間、故障を繰り返した体への不安。先発へのこだわり、エースのプライドもある。それでも、原監督との話し合いで最後は首を縦に振った。エースを張ってきた男の決断は、自らの「体」と「心」に挑む格闘でもあった。

 ほぼ毎日ブルペンに入り、極度の緊張に身を置く日々。調整法を探り、生活を変えた。今季途中、世田谷区内の自宅マンションの隣室を1億円近くで購入。帰宅後、一家団らんの時を過ごすと、テレビとベッドだけ置かれたこの部屋の鍵を開ける。約2時間、個人トレーナーによるマッサージを受け深い眠りへ。愛息・一真くんはもうすぐ1歳7カ月。寝顔を眺めたい気持ちはあるが、睡眠と休養はプロのつとめ。「父」である前に球界のエースである右腕の責任感そのものだ。

 「精神的にきついポジション。いい経験をさせてもらいました」。本当は優勝の瞬間のガッツポーズをイメージしていた。“守護神の特権”はポストシーズンにお預け。チームのため耐えて挑んだ1年を振り返るのも、もう少し先だ。

(佐藤春佳)

■データBOX

 巨人・上原は今季ここまで4勝3敗32セーブ。シーズンのセーブ数は従来の球団記録(93年石毛博史の30セーブ)をすでに更新している。8月には月間11セーブを挙げて、球団の月間記録(01年4月岡島秀樹の10セーブ)も更新した。
 プロ1年目の99年に20勝を挙げている上原。シーズン20勝、同30セーブをともに達成したのは江夏豊(阪神で20勝以上4度、日本ハムで30セーブ以上1度)に次いで史上2人目の快挙だった。

★ビール30分で泡に

 祝勝会は東京ドームに隣接するホテルの屋外プールで行われた。選手らは「CHAMPIONS」のロゴが入った黒の記念シャツを着て登場。原監督が「勝ったときも負けたときもそれをエネルギーにかえてきた。この優勝も次のエネルギーにかえていこう」とあいさつ。選手会長の高橋由が「本当に苦しいシーズンだったけど、きょうはとことんやりましょう!!」と叫んだのを合図に、選手が一斉にビールのしぶきをあげた。用意されたビール3000本、シャンパン300本、四斗樽2本は約30分で空になった。

(都内)

◆巨人V9監督の川上哲治氏(87)

 「私たちOBだけでなく、ファンにとっても4年間の優勝ご無沙汰(ぶさた)は長かった。チーム愛でまとめた原さい配が、混戦のレースを制する原動力になった。この勢いでプレーオフ、日本シリーズも勝ち抜いてほしい」

◆5年前の優勝を最後にメジャー移籍した巨人OBのヤンキース・松井秀喜外野手(33)

 「優勝おめでとうございます。ずっと純粋に応援していました。後輩たちが頑張って優勝したというのはめちゃめちゃうれしいです。ヨシノブやシンノスケといった生え抜きの彼らが中心となってリーダーシップを取ってみんなを引っ張って戦ってきたからこそ、今年の優勝があると思います。プレーオフも勝って絶対に日本シリーズに出て、日本一になってほしいです。今年の優勝が巨人の黄金時代の幕開けになるといいですね」

◆ソフトバンク・王監督

 「5年ぶりか。日本シリーズに出てくれば、盛り上がるだろう。われわれにも十分に(日本シリーズ出場の)チャンスはあるから」

◆豊蔵一セ・リーグ会長

 「攻守とも高いレベルでバランスが取れていました。まさに総合力の勝利でした。2年連続でBクラスに終わったチームを立て直し、ペナントを奪回した原監督の采配(さいはい)に敬意を表します」