巨人優勝特集

2007年10月03日 更新

G投再生お見事!これぞ『優勝請負人』尾花コーチの手腕だ

ニッコリ首脳陣 サヨナラの瞬間、ベンチを飛び出した尾花コーチ(左から2人目)。G投を再建した(撮影・斎藤浩一)

ニッコリ首脳陣 サヨナラの瞬間、ベンチを飛び出した尾花コーチ(左から2人目)。G投を再建した(撮影・斎藤浩一)

 06年に再び帆をあげた原巨人は投壊状態からの船出だった。05年のチーム防御率は4.80。そんな最重要課題だった「G投再生」を果たしたのが、ソフトバンクに投手王国を築くなど『優勝請負人』と呼ばれる尾花高夫投手総合コーチ(50)だ。2年間でチーム防御率は1点以上も減少、今季は内海、木佐貫ら伸び悩む若手を大黒柱に育て上げた。その育成手腕と投手起用の秘密を聞いた。

(取材、構成・楠山正人、佐藤春佳)

 【3本柱で40勝

 −−高橋尚、内海、木佐貫で40勝、貯金20。計算はしていましたか

 「していたよ。今年は木佐貫をどうやって独り立ちさせるか、ということだけだったから。それに関しては合格点だね」

 −−木佐貫に目をつけた理由は

 「持っている素質が違うよ。まじめだし、(血液型は)B型だしね(上原、尾花コーチもB型)。B型は切り替えがいい。O型とB型にはいいピッチャーが多い。これが10勝すれば何とかなる、と」

 −−技術的にはどこを指導したのでしょう

 「(腕の振りの)後ろを小さくして前で離す、それだけ。力が強く伝わるところでいかに腕を振るかを知らないから、いい球を投げても打たれる」

 −−安定感といえば内海。上原の故障で開幕投手をつとめました

 「上原がダメなら内海と決めていた。パウエルが元気でも工藤(横浜)がいても、開幕は内海だった。将来的なこと考えたらそういう立場なんだということを、こちらから示さないといけない。去年に比べると精神的にも強くなった」

 −−高橋尚はひと皮むけたような活躍でしたが、去年の抑えの経験が生きたのでしょうか

 「あれだけのもの(才能)をもって2ケタ勝利を1度しかしていなかった(02年10勝)のが不思議。いいピッチングしても一発で負けるのは、繊細なピッチングができないということ。抑えにしたら嫌でもそれをしないといけないから」

 【守護神・上原

 −−上原のストッパー構想はどの段階から

 「最初は暫定的なもので(痛めた)足が厳しい、1イニングだったら大丈夫じゃないのか、とね。その後もいつから先発復帰させようか探っていた。交流戦のヤフードームでの練習(6月15日)で上原から『今年はストッパーに専念する』といわれてね。これは優勝しないといかん、となりましたよ。彼が本意じゃないところ(抑え)でもチームのためにやる、と言うんだから」

 −−「負けゲームには投げさせない」など上原を使う条件は決めていたのですか

 「こっちは何とかセーブがつくところで、と考えるけど、上原がセーブに興味がないからね。『チームが勝てばいいです』『セーブがつこうがつくまいが』と。それもすごいこと」

 −−豊田もセットアッパーで生きましたね

 「本来なら不満分子になるところを、上原や林にアドバイスしたりね。役に徹していい働きを見せてくれたし、本当に感謝しているよ」

 【新戦力の台頭

 −−尾花コーチが育てた新戦力も力を発揮しました

 「前半戦のMVPは会田やね。オープン戦を見ていてずっとゴロを打たせていたので、これはいけると思った。ゴロは最高。ひとつのゴロで2つのアウトを取れるわけやから」

 −−「巨人の藤川球児にする」と言ってきた西村はめちゃくちゃ投げさせました(チーム最多の56試合登板)

 「あれだけタフで速い球を持っているんだからね。毎回テーマを持たせてやっていて、だいぶ場慣れしてきたよ。今年だけのことじゃないし、そう(藤川のような存在に)していかなきゃいけない」

 −−リリーフ向きと思われていた福田の先発起用には驚きました

 「結局、みんな思いこみだよね。福田の場合は速い球を投げようとすると力む。力む結果が四球。じゃあ力まないようにするにはどうしたらいいか。先発で八分の力でピッチングしたら、また違った結果が出るんじゃないかと」

 −−久保も先発で復活

 「後ろ(中継ぎ)だとなんかドキドキしなきゃいけない。三振も取れるけど一発もある。うまく1イニング抑えてすっと帰ってくる、というリズムがうまく作れない。変化球も多いし、あいつも六回まで3点以内ということなら十分に力があるだろうとね」

 【投手王国再建へ

 −−2年前に就任し、05年の巨人の投手陣のデータを見たときは「ダイエーの(就任)1年目よりひどい」と思ったとか。尾花改革はどの段階まで進んでいますか

 「よくはなっていると思うよ。ただ今年は負けゲームで出したピッチャーが追加点を許すパターンが多かった。負けと勝ちの防御率を比較すれば分かるよ。来年は負けゲームでも終盤抑えられるピッチャーをどう育てるか。そこを踏ん張っていければ、もっと勝ちを拾っていける」

■尾花 高夫(おばな・たかお)

 1957(昭和32)年8月7日、和歌山県生まれ、50歳。PL学園高から新日鉄堺を経て、78年ドラフト4位でヤクルト入団。82年から4年連続2ケタ勝利をあげるなど、エースとして活躍。91年に現役引退。95年からロッテ、ヤクルト、ダイエー(ソフトバンク)で投手コーチを歴任。06年から巨人の投手総合コーチ。現役通算成績は425試合に登板、112勝135敗29S、防御率3.82。1メートル84、90キロ。右投げ右打ち。

★裏話

 『優勝請負人』と呼ばれる尾花コーチの指導は厳しい。「仕事の質=素質×やる気×考え方」が信念。「これだけ素質がある巨人の投手が力を出せないのは、考え方が一流じゃないから」とキャンプ中は若手、ベテラン問わず毎日のように夜間ミーティングを開き、投球理論やデータで「考え方」を徹底的に鍛えた。

 選手とプライベートの付き合いをしないのも信条。厳しい言葉をかけることも多く「(コーチは)嫌われるのが仕事。選手に好かれるのはなめられているか、必要ないか」。

 エースに育てた斉藤和もソフトバンク時代は慕うどころかあいさつもしないほどだったが、「いなくなってありがたさを実感した」と今ではメールを交わす熱い師弟関係だ。巨人の投手陣が「恩義」を感じるのは、数年後かもしれない。

◆巨人・高橋尚

 「みんなの力を結集して勝ち取った優勝。自分がやったとかは感じていない」

◆巨人・木佐貫

 「復活とかはみなさんが判断されること。とにかく1年間、しっかり投げられてよかった」

◆巨人・二岡

 「シーズンが終わっていないのでまだ振り返ることはできないけれど、結果的に優勝できて本当によかった」

◆九回を無失点で締めた巨人・野間口

 「九回裏の打順が(クリーンアップと)分かっていたので、3者三振をとるつもりで投げました。攻撃のリズムを作りたかった」

◆九回に代打で内野安打の巨人・矢野

 「ずっとヒットを打っていなかったので、今季の集大成だと思って打席に臨んだ」

◆巨人・西村

 「(シーズン)最後のほうは打たれてばかりで迷惑をかけた。でも、優勝できてめちゃくちゃうれしかった」

◆巨人・久保

 「やっと優勝できた」

◆巨人・金刃

 「うれしいです」

◆巨人・木村拓

 「1年が本当に早かった。ありがたい」

◆日本ハム・ヒルマン監督

 「あれだけのすばらしい選手がそろっている巨人軍ですので、ある程度結果は予想することができましたが、厳しいペナントレースを制したことに対し、原監督はじめ選手のみなさんに敬意を表します」