「気合ダァ〜!」22発に送られ浜口が出発

浜口京子 アテネ五輪日本選手団の旗手を務めるレスリング女子72キロ級、浜口京子(26)=ジャパンビバレッジ=が11日、開会式(13日)に向けて成田発の航空機で出発。約50人の地元応援団が見送りに駆けつける中、父・アニマル浜口さん(56)は得意フレーズ『気合ダァ〜!』をなんと22度も連呼。日本の空の玄関、空港ロビーが気合色に染まった。また、同便で日本選手団主将の井上康生(26)=綜合警備保障、陸上ハンマー投げ男子の室伏広冶(29)=ミズノ=ら金メダル候補も出陣した。〔写真右:「いくぞ、オリャー!」。京子の迫力、気合の声に周りもかたまった=撮影・小倉元司。同下:なにがなんでも「気合ダァ〜」。父・アニマルさん=中央右=の魂の声=撮影・小倉元司

 夏休み真っ盛り。家族連れや外国人観光客の視線も気にしない。日本の空の玄関口で、アニマルさんのダミ声が響き渡った。おなじみのフレーズ、「気合ダァ〜!」。まずは12連発。搭乗手続きの直前にも、再び「気合ダァ〜!」を10連発。惜気なく打ち上げた計22発の父の魂の絶叫に、浜口の目から“気合の涙”がこぼれ落ちた。

 「今までのレスリング人生、いろいろとあったけど、集大成だと思って金メダルを目指して頑張ります」

 力強い門出の言葉に、今度は地元、東京・浅草を中心にした約50人の応援団から歓声があがる。おそろいのTシャツには、日の丸に金文字で「万雷之気合」。京子の試合では必ず、スタンドから小太鼓と鐘を打ち鳴らす仲間たちだ。

アニマル浜口 だが、五輪本番を前に一つの難題が持ち上がった。警備上の問題などから、競技会場内での鳴り物応援が使用禁止になったのだ。チャキチャキの江戸っ子たちは、7日に地元のホテルで緊急対策会議を招集。論議を重ねた末、応援団による“大包囲網作戦”を練った。規制外の会場出入り口を中心に陣取り、京子の到着とともに小太鼓を猛打する。相手選手には逆に、その轟音で威嚇攻撃。試合中は、赤いメガホンで声援を送り続ける。本丸を囲い込み“外堀”からの熱血応援だ。

 本番より一足早く、この日は出発ロビーの雰囲気を変えた。「京子、鬼になれ!試合までに気持ちを盛り上げろ。覚醒しろ。目覚めてやればいいんだ」。アニマルさんのメッセージに、巡回中の警察犬まで腰を引いた。京子はアテネに旅立つ。何人もの日本のメダル候補たちがこの空港から出発したが、主役は文句なしで日本一の熱血父娘。早くも「一番」を獲った。

熱血の応援風景

 京子への応援は小太鼓、鐘などの鳴り物を使い、まるで地元・浅草の三社祭さながら。他競技のスタンドの応援風景もさまざまで、バレーボールの「ニッポンチャチャチャ」はおなじみ。水泳は「ハーイッ、ハーイッ」など、選手に合わせた独特のテンポ。一方、柔道や重量挙げのような肉体派への声援は、短い一発掛け声。また、陸上の走り幅跳びや三段跳びなどフィールド競技は、選手自らがスタンドに手拍子を求め、そのリズムを味方に記録を伸ばす。

★“中女3人娘”も元気ハツラツ

 気合十分なのは、浜口だけではない。中京女大“レスリング3人娘”の63キロ級・伊調馨、55キロ級・吉田沙保里、48キロ級・伊調千春も元気にアテネへ出発。金メダル最有力の吉田は「気持ちが高まってきました。あとはアテネで、調整するだけです」と、準備万端を強調した。

レスリング・アテネ五輪女子日本代表
階級 氏名 所属 年齢
48キロ 伊調千春 中京女大 22
55キロ 吉田沙保里 中京女大 21
63キロ 伊調馨 中京女大 20
72キロ 浜口京子 ジャパンビバレッジ 26
【注】全階級とも日本時間22日に予選リーグ、23日に準決勝・決勝を実施

★井上康生はボストンバッグ1つで

井上康生 アテネへの出発に合わせ、柔道男子100キロ級代表の井上康生は早くも実戦モード=写真。ボストンバッグを1つ抱え、「とくに持っていくものはありませんよ。柔道着だけです」と“柔の道”を極める構え。日本選手団の主将を務めるが、まずは自身の2大会連続金メダルが命題。「とにかく、気持ちを高めていきたい」。眼光に気合がこもった。

室伏は仲良しの朝青龍から気合もらった

 大きな肩が並んだ。2人とすれ違う行楽客が何度も振り向いた。あっ、室伏と朝青龍だ。搭乗ロビーがどよめく中、室伏が笑顔を浮かべた。「偶然、会いました。ふだんから仲がいいんですけど、お互いに頑張ろうと声を掛けました」。

 アテネ五輪の金メダル候補と大相撲の横綱は、数年前からの知り合い。名古屋場所前の7月3日には、室伏が高砂部屋の宿舎を訪問。トレーニング方法をアドバイスした。この日、モンゴルに帰国した朝青龍も、思わぬ再会にうれしそう。

 「金メダルを獲ってきて、と言った。一緒にハンマー投げをやったこともあるんだよ、お遊びだけどね。五輪はテレビで応援しているよ」。室伏はドイツ・フランクフルトに1泊後、父・重信コーチ(58)、ハンマー投げ女子代表の妹・由佳(27)とプラハで最終合宿を行う。本番の24日へ向け、友人のエールが何よりのパワーになる。


著作権、リンク、個人情報について