復活「八田イズム」で金5個だ!

皇太子ご夫妻 アテネで金メダル量産へ、あのスパルタ精神がよみがえった。昨年3月に就任した日本レスリング協会・福田富昭会長(63)が、かつて日本をレスリング王国に導いた伝統の「八田イズム」復活を宣言。自ら育て上げた女子レスリングをアテネ五輪の正式種目にねじ込み、男女合わせて金メダル5個の獲得を目標にかかげた。故八田一朗氏の教えは永久に不滅だ。〔写真:64年東京五輪で皇太子ご夫妻=現天皇、皇后両陛下=のご説明役を務めた八田一朗氏=左=。“ミスター・レスリング”だった

 日本レスリングは五輪で20個もの金メダルを獲得している。この一大王国を築き上げたのが、51年から83年に亡くなるまで日本協会会長を務めた八田一朗氏の合理的スパルタ指導法。すなわち「八田イズム」だ。

 「負けた理由を探すな」「夢の中でも勝て」「左右とも利き手にしろ」「マスコミを味方にしろ」などがその極意の一部。心身両面を鍛える精神は現在にも通用する。

 恐怖の厳罰「剃るぞ!」は流行語になった。逃げ腰の試合をした選手や遅刻、規則違反をした選手を丸坊主にするだけでなく、下の毛まで剃らせて猛省をうながした。また、「ライオンとのにらめっこで精神力を鍛える」「沖縄でハブとマングースの戦いを見て闘魂を学ぶ」などユニークな練習で、レスリングにマスコミの注目を集めた。

 「私は八田さんの『狩りの犬 獲物を追って どこまでも』という俳句が好きなんだ。目標を立てたら、どこまでも追って捕らえろ。その精神を大事にしたい」

 八田会長の死から20年後の昨年、八田イズム復活を宣言したのが福田富昭・現会長。84年から女子の強化に乗り出し、私財を投じて新潟の山中の廃校を女子合宿所に改装するなど日本を最強国に育て、国際連盟理事として五輪種目化を実現させた熱血漢だ。

 「八田さんが男子レスリングの基礎を築いたから、今の女子につながった。感謝しなければ」

 福田会長は「オイルレスリングに汗まみれでの戦い方を学べ」「温泉で浴衣姿を披露」「滝に打たれて精神修行」などのアイデアで女子代表に注目を集め、アテネの開会式では浜口京子が旗手の大役を務める。八田イズムと福田イズムで心身ともに鍛えられた4人の女子代表は全員「絶対に金メダルを獲ります」と言い切り、重圧を感じさせない。このたくましさがあれば、アテネでの全階級制覇も夢ではない。

★八田 一朗(はった・いちろう)
 1906(明治39)年6月3日、広島県生まれ。29年、早大柔道部の米国遠征でレスリングと出会う。31年に早大レスリング部、32年に大日本アマチュアレスリング協会を創設。32年ロサンゼルス五輪フリー・フェザー級代表。51年から日本アマチュアレスリング協会会長を務め、33年間の在任中に7度の五輪で金メダル16個獲得。65〜71年には参院議員を務める。76年に勲二等瑞宝章受章。83年4月15日、76歳で死去。

◆レスリング・アテネ五輪代表選手◆
  階級 氏名 所属 年齢
▼フリー 男子 55キロ 田南部 力 警視庁 29
60キロ 井上 謙二 自衛隊 27
66キロ 池松 和彦 日体大助手 24
74キロ 小幡 邦彦 綜合警備保障 23
84キロ 横山 秀和 秋田商高教 33
女子 48キロ 伊調 千春 中京女大 22
55キロ 吉田沙保里 中京女大 21
63キロ 伊調   馨 中京女大 20
72キロ 浜口 京子 ジャパンビバレッジ 26
▼グレコローマン 55キロ 豊田 雅俊 警視庁 27
60キロ 笹本   睦 綜合警備保障 26
74キロ 永田 克彦 新日本プロレス 30
84キロ 松本 慎吾 一宮運輸 26

★五輪日本史★

 これまで金20銀14銅10のメダルを獲得している。初めて選手を派遣した24年パリ大会でフリー・フェザー級の内藤克俊が銅メダル。52年ヘルシンキ大会のフリー・バンタム級で石井庄八が日本勢戦後初となる金メダルを獲得。金メダル5個を量産した64年東京大会を筆頭に、軽・中量級を中心にレスリング王国を築いた。ただし近年は苦戦。不参加の80年モスクワ大会を除き12大会連続でメダル獲得中だが、金は88年ソウル大会が最後だ。

★世界の勢力★

 フリースタイルはイランと旧ソ連のロシア、ベラルーシ、ウズベキスタン、カザフスタン、アルメニア、グルジア、アゼルバイジャン、ベラルーシなどに世界王者がひしめき、これに軽量級ならモンゴル、韓国、キューバ、重量級は東欧諸国、米国勢が続く。グレコローマンはこれにスウェーデンやトルコ、エジプト勢が強国として加わる。女子は日本が最強国で、米国、ロシア、中国が追随している。

★ルール★

 全身を使っての攻防が許されるフリースタイルと、上半身のみの攻防に限られるグレコローマンがある。女子はフリーのみ。試合時間は3分×2ピリオド(休憩30秒、最大延長3分)。相手の両肩を1秒間マットにつけるとフォール勝ち。制限時間内でフォールできない場合は、技ごとに決められているポイントで勝敗が決まる。両者とも3ポイントに満たなければ延長に入る。試合途中で10点差をつけた場合はテクニカルフォール勝ちとなる

★グレコ松本はドイツGP4位

 レスリング男子グレコローマンのドイツ・グランプリ最終日は20日、ドルトムントで7階級を行い、アテネ五輪代表4人が出場した日本でただ1人勝ち残っていた84キロ級の松本慎吾(一宮運輸)は4位だった。松本は19日の決勝トーナメント1回戦を突破したが、準決勝でロシア選手に0−7、3位決定戦でウクライナ選手に0−3で判定負けした。

共同

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